細胞シート工学 (Cell Sheet-Based Tissue Engineering)
~ 温度応答性細胞培養容器 ~
中心研究者が独自に開発したティッシュエンジニアリング技術「細胞シート工学」の特徴は、温度応答性ポリマーを培養基材にナノメートルレベルで固定化した表面(ナノバイオインターフェイス)を作製できる技術にあります。温度応答性ポリマーは、32℃付近以上で疎水性に、それ以下の温度では親水性となる特性があります。(図1)そのため、培養時(37℃)では細胞が接着可能な疎水表面を維持することができ、培養後に温度を室温程度(20~25℃)に下げることで酵素(トリプシン等)処理を行うことなく細胞を回収することができ、コンフルエントまで培養した細胞は細胞外マトリクス(ECM)を保持したまま(細胞シートとして)回収することが出来ます。(図2)
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図1. 温度応答性ポリマーの特性 (poly(N-isopropylacrylamide) ) |
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図2. 温度応答性基材からの細胞シート回収原理 |
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~ 再生医療のプラットホームとしての細胞シート工学 ~
細胞シートは身体のどの部位の細胞(細胞ソース)からも作製することができるという点が大きな特徴です。そのため、細胞シート工学はES/iPS細胞を含む全ての細胞ソースにて治療手段として応用が期待できる再生医療のプラットホーム(基盤)技術と考えられています。
細胞シートは酵素処理を受けていないので細胞本来の機能も失われることなく保持しており、得られた細胞シートは生体組織へ速やかに生着する特徴を有しており、複数の細胞シートを積層させ細胞シート同士を接着させることもできます。この技術を用いることで、細胞シートを積層化し厚みのある組織・臓器を作製することが研究されており、新たな再生医療技術として期待されております。
~ 細胞シートの積層化 (細胞シート操作技術) ~
温度応答性培養皿より回収した細胞シートはとても薄く(~数十ミクロン)、ピンセットなどでそのままで扱うことがとても難しく、図3のように樹脂製のメンブレン(支持膜)に固定するなど様々な工夫や専用デバイスの開発を行いながら移送や移植を実施しております。
図3 ドーナツ型の支持膜により回収された細胞シート
本プロジェクトでは、共同研究者の清水教授が開発したスタンプ型積層デバイスによる積層化技術を用いて組織化の可能性を検討しています。本技術では、図4のようにデバイスの回収面にゼラチンゲルなど(支持材)を固定し、細胞シートを生着させることを繰り返して積層化細胞シートを得ることができます。本技術は、自動操作(機械化)に向いており、精密な組織化を設計する手法として最適と考えております。また、ゼラチンは37℃下で容易に溶解し除去できるので簡単に組織化(積層)された細胞シートのみを回収することができます。
図4 スタンプ型積層デバイスによる細胞シートの積層化手順
スタンプ型積層デバイスによる技術が開発されたことで細胞シートは何層(何枚)でも重ねることが可能となりましたが、厚い組織を作製するには酸素と栄養を供給する血管(血管網)が必要であり、血管網を付与する技術は今後厚い組織や臓器を作製する上で不可欠です。我々は、生体内にて積層化した細胞シートへ効率的に血管網を導入する技術は既に確立し厚い組織を得られるようになっております。現在は、これらの知見に基づき、生体外(容器内)において血管網を付与しつつ厚い組織を作製する技術の開発を進めています。
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細胞シート工学とは?
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