No.34 & No.35(2022)
第43回未来医学研究会大会
自分の声が蘇る! ~喉頭全摘患者のためのインテリジェント人工喉頭~
日本光電工業株式会社 中村 大雅
 喉頭癌の罹患率は、人口10万人あたり約3人であり、他の部位の癌と比較すると少ないと言えるが、癌になる箇所によっては、根治のために約半数の患者が、喉頭全摘出になってしまう。喉頭癌などにより喉頭を全摘出した患者は、通常の声帯振動による発声機能を失ってしまう。現在、このような喉頭摘出患者数は、日本では約2万人、全世界では約60万人と推定されており、近年増加の傾向にある。
 発声機能を回復するために、現在数種類の代用発声法が実用化されているが、いずれも音の明瞭度が悪い、習得が困難である、利便性に欠ける等の問題点がある。特に、聞き手に大きな違和感を抱かせる音声であるため、他者とのコミュニケーションを気軽に楽しめず、結果的に人との関わりを避け、自ら孤立したり、欝状態に陥ったりする事例もある。
 そこで本稿では、普段の発声方法に近い使用感で、かつ本来の声質を再現できる、新しい人工喉頭デバイスを提案する。喉頭摘出前の自分の声を取り戻し、コミュニケーションを気軽に楽しめることは、患者のQOL向上につながり、ひいては患者に生きる希望を与えるであろうと考えている。
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