No.36(2023)
寄稿
理事就任のご挨拶
株式会社エスアールエル 研究開発本部 試験開発部 郡 健一朗

 この度、未来医学研究会の理事を拝命いたしました株式会社エスアールエルの郡 健一朗と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私は2003年に株式会社エスアールエルに入社後、臨床検査に従事しておりました。2003年はヒトゲノム解読の完了が宣言され、まさにゲノム医療がスタートした年であります。現在ではシークエンス技術の進歩により短期間で安価にゲノム解読できるようになり、ゲノム検査も世界中で実施されております。 私も米国でゲノム医療について学び、帰国後、社内で全ゲノム解析の受託体制構築を進めてまいりました。全ゲノム解析はこれまでの臨床検査とは全く異なり、生化学検査のように測定機器が検査結果を自動的に出すのではなく、膨大なゲノムデータを解析する環境・解析ソフトウェア等の構築、そこから得られた結果を臨床現場に有用な情報に解釈を加えて報告することが必要です。そのため分子生物学・バイオインフォマティクス・プログラミング・ITエンジニアリングなど様々な専門性を持った技術者がいなければできない検査となってきており、まさに臨床検査でのパラダイムシフトが起こっていると言えるかと思います。 同時に検査結果の解釈も複雑になってきており、膨大なゲノムデータ、患者情報、家族歴、治療歴、臨床情報から臨床現場に必要な情報まで解析して絞り込み、患者ごとに報告する個別化医療が求められています。

 私は2013年のBMC 45期の卒業生なのですが、様々な専門性を持った同期との議論や意見交換から学びを得る中で、異なる専門性からのアプローチが新たな視点をもたらすことを体験し、その経験が今も大きく私の中で活きております。BMCが掲げている医工連携のように、これからは一つの領域だけではなく、複数の領域を結び付けて新しい価値を創造していくことがこれまで以上に求められる時代となっております。未来医学研究会を通し、このような人材の育成に微力ながら貢献できるように努めてまいります。会員の皆様と共に学び、共に成長し、共に未来を築いていく喜びを分かち合えることを楽しみにしております。


 
郡 健一朗 (こおり けんいちろう)

株式会社エスアールエル 研究開発本部 部長

未来医学研究会 理事

 

略歴

2003年 株式会社エスアールエル入社
2016年 染色体検査課 課長
2017年 遺伝子・染色体解析センター 副部長
2018~2019年 Baylor Genetics (Houston, Texas) 出向
2020年 研究開発本部 担当課長
2021年~ 研究開発本部 試験開発部 部長(現職)