第42回未来医学研究会大会を、2019年4月13日(土)に東京女子医科大学弥生記念講堂において、約180名の参加により開催致しました。未来医学研究会は、東京女子医科大学先端生命医科学研究所が運営するバイオメディカルカリキュラム(BMC)を母体とした長い歴史があり、開催までは私共の運営で不安もございましたが、無事終了することができました。ご講演をいただきました先生方や、当日ご参加頂いた皆様に、深く御礼を申し上げます。
本研究会は、1978年に発足以来、初代理事長の桜井靖久先生から、前理事長の岡野光夫先生、そして、現理事長の清水達也先生の間まで、関係された先生方のご尽力によって、医療用材料、人工臓器、再生医療という幅広い分野で、数多くの研究成果をあげられております。特に、今日の医療において医療機器の果たす役割は大きく、高齢化や新興国の国際需要の拡大を受けて、そのグローバル市場が拡大傾向にあります。また、わが国では、国の施策としてオールジャパンでの医療機器開発プロジェクト事業が実行されています。このような背景から、今回第42回大会のテーマは、「未来医療を実現するMedical Device」といたしました。
今回の大会の特別講演では、小惑星探査機「はやぶさ」を開発された宇宙研究開発機構の川口淳一郎先生をお招きして、さまざまな困難を乗り越えたプロジェクトの思考法とリーダーシップについてのお話しをいただきました。これまで人類が経験したことがないプロジェクトでのご苦労と課題解決について、ユーモアを交えながらわかりやすくお話しされる内容に、会場全員が引き込まれました。川口先生のご講演は、今後の研究や開発における様々な課題解決に対して新たな気づきへの繋ぎとなる、大変素晴らしいご講演でした。
また、‘未来医療の行方’のセッションでは、医療機器における世界的な開発動向の分析や行政の施策について、池野文昭先生(スタンフォード大学)、西川和見先生(経済産業省)、三浦明先生(厚生労働省)に、それぞれ、ご講演をいただきました。さらに、‘未来医療の実際’のセッションでは、企業と大学の研究開発の現状について、千秋和久先生(テルモ株式会社)、島田智子先生(旭化成ゾールメディカル株式会社)、小川治男先生(オリンパス株式会社)、村垣善浩先生(東京女子医科大学)が、ご講演されました。先生方のご講演と質疑応答は、わが国の未来医療を実現するために必須となる医工連携と産学官連携の課題や進め方について、議論する良い機会になったのではないかと思います。この先生方のご講演に先立ち、未来への提案として、BMC49期修了生から3名の表彰者(小松秀朗先生、本田健先生、荒井大先生)から、研究内容のご発表と表彰が行われ、清水達也先生からは、先端生命医科学研究所の活動報告として、桜井靖久先生が描かれたイメージを、さらに発展させた新たな未来医療についてのお話をいただきました。そして、大和雅之先生(東京女子医科大学)が産官学融合の重要性についてお話しされ、最後に、岡野光夫前理事長が、米国ユタ大学からのビデオメッセージで、この研究会へのご期待を述べられました。
先端生命医科学研究所は50年という長い歴史を持ち、バイオメディカルカリキュラムでは、これまで、2000名を超える修了生を輩出し、多くの方々が医薬・医療機器業界のリーダーとして活躍されています。今回、この大会を運営させて頂きまして、さまざまな分野の研究者、開発者、医師、行政の皆様が一堂に介して、未来医学について議論することは、新たな技術を具体化していくために非常に重要な機会となることを、改めて認識いたしました。この未来医学研究会が、さらに次の50年後に向かって、ますます発展していくことを祈念しております。
最後になりますが、本大会の開催にあたって準備していただきました大会事務局及びスタッフの皆様に、深く感謝を申し上げます。
(2020年2月14日受理, 2020年3月23日公開)
鮫島 正 (さめしま ただし)
テルモ株式会社 執行役員
心臓血管カンパニーハートシート事業室長 兼 コーポレートR&D再生医療リーダー
未来医学研究会 理事
略歴
1983年 九州大学理学部生物学科卒業.同年 テルモ株式会社入社
2001年 テルモ株式会社研究開発再生医療 主任研究員
2016年 テルモ株式会社 ハートシート事業室長
受賞
2016年 産学官連携功労者表彰厚生労働大臣賞受賞
専門分野
医療機器及び再生医療等製品の開発