No.36(2023)
第45回未来医学研究会大会
第45回大会総括
大会長 半井 大

 第45回未来医学研究会大会が、2023年7月8日、日本橋ライフサイエンスハブを会場として開催されました。今回はZOOMウェビナーも利用したハイブリッドでの開催となりました。

 未来医学研究会は、東京女子医大が主に社会人向けに提供しているバイオメディカル・カリキュラム(Biomedical Curriculum - BMC)を母体として発足し、先端医療開発のための意見交換や議論の場を提供し、会員相互の研鑽や交流・連携を推進している組織になります。大会は年次で行われますが、その内容は前年度のBMC卒業生による「未来への提案」の講演と、大会ごとに設定されたテーマに基づいて招聘された先生方による講演を柱としています。

 毎年の大会長や幹事は産業界・アカデミアから様々な方が選ばれますが、今回は複数年度をまたいだBMC卒業生から幹事団が構成されるという、大会史上初のケースとなりました。私たちが幹事団を務めることになった経緯は、私(BMC47期卒)が公私に渡って親交のあるBMC48期卒のソニー(株)長岡さんから「未来医学研究会の大会長をしてみる気はありますか?」と打診を受けたのが契機で、そこから同じくBMC卒業生の谷邊さん(47期)、舟津さん(50期)、椿さん(50期)を巻き込んで幹事団を形成したという流れになります。幹事のオファーを快く引き受けていただき、当日までの様々な調整作業や、現地では司会や座長などプレッシャーのかかる役割を果たしていただいた幹事の方々には心から感謝しています。

 大会の前半は、前年度(53期)BMC卒業生による「未来への提案」の講演になりますが、今回はテルモ(株)の鈴木様、(株)日立製作所の小川様、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ(株)の井上様の3名から講演を頂きました。毎回このセッションは、BMCカリキュラム内で提供される未来医学セミナーにおいて選抜された優秀発表者から講演いただくものになりますが、今回も皆さん三者三様で内容・スライド共に素晴らしく、説得力のある内容であったと共に、個人的に同じBMC卒業生としては「彼らと同期だったら自分は選ばれんなあ」と思わせるに十分な内容でした。選抜されたお三方の今後の活躍が楽しみです。

 大会の後半は招聘された先生方による講演となり、特別講演として、まず(一社)AIM医学研究所の宮崎先生からは「猫が30歳まで生きて人の透析がなくなる日-AIMの発見から創薬まで-」というテーマで、AIMタンパクによる体内老廃物除去の機序と、その臨床応用への道筋についてお話頂きました。続いては(株)mediVRの原先生からは「仮想現実技術を用いた脳再プログラミング療法で激変する医療現場の最前線」として、VR技術を使った関節連関のバグ取りという方法論による運動機能の再獲得の手法について、次いで(株)サイフューズの秋枝先生からは「バイオ3Dプリンタを用いた再生医療と新しい社会の創出」として、三次元に構築された再生医療等製品の上市を目指した取り組みについて、理化学研究所の砂川先生からは「冬眠の臨床応用」として、冬眠誘導の機序と人間応用の可能性についてお話頂きました。今回の大会テーマは「既成概念を打ち破る先端医療 - think outside the box -」でしたが、どの先生の講演も本当にテーマに相応しく、遠い未来だけではなく、近未来にも大きな希望が持てる興味深いお話を頂戴できました。後半の部の最後には「先端生命研が切り拓く未来医療」として、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の高橋先生、正宗先生からご講演頂きました。

 今回はパンデミックによる対面の規制が徐々に緩和される中、現地・オンライン含めた参加者数は150人を超え、講演後の現地での懇親会にも100人近くが集まるという盛会となりました。旧知のBMC生や先生方と旧交を温めることができましたし、これまで知り合う機会の無かった最近のBMC生とも知り合える良い機会となりました。対面でのイベントの良さを再確認できました。

 私からの総括・所感は以上になりますが、前述の通り今回は幹事団をBMC卒業生に担当していただきましたので、各幹事からの所感も記載させていただきます。

 長岡さん(BMC48期卒、ソニー(株)):今回、清水先生から幹事のご相談を頂いたことをきっかけとし、最終的には素晴らしい仲間と一緒に、幹事を全うすることができました。半井さんにおいては大会長まで即断でお引き受けくださり、感謝の念に堪えません。場所選定、演者先生方へのお願い、時間割からケータリングに至るまで、事務局の福田様から多大なご助力を賜りながら、楽しく当日までの準備を行うことができました。当日は私個人としても、学術集会の司会という、なかなか得られない貴重な経験をさせて頂きました。先駆的な学術深耕だけでなく、多くの人と人が接する機会を提供し続けている未来医学研究会の発展に、今後も微力ながらお役に立てることがあればと、改めて想う次第です。ありがとうございました。

 谷邊さん(BMC47期卒、(株)南山堂):2022年に届いたメッセージ、「運営委員としてお手伝いいただくことは可能ですか?」きっと有能な人が多数手伝っていて、私なんぞには裏方の役割を求められているんだろう…、「私でお手伝いできることがあれば」。そこから、気づいたら座長の席に座っていました。貴重な機会を与えてくださった未来医学研究会・BMCの先生がた、頼もしすぎた大会長・幹事や事務局の皆さん、つたない進行を温かく見守ってくださったご登壇者や参加者の方々、本当にありがとうございました。それなりの期間を生きていると、摩擦を避けて平穏に暮らしていく慣性が働いてきますが、信念と目標のために摩擦を恐れず立ち向かう先生がたのお話をお聞きして、私も「いっちょ、やってやりますか」と思えたのが望外の喜びです。

 椿さん(BMC50期卒、H.U.フロンティア(株)):未来医学研究会大会幹事という貴重な機会をいただきありがとうございました。BMCの期を超えての交流が幹事に繋がるとは在籍当時は想像もしていませんでした。テーマが「既成概念を打ち破る先端医療 - think outside the box - 」ということで開催前から面白い大会になりそうだと期待していましたが、大会当日のBMC卒業生の発表、また演者の先生方の講演はどれも興味深く、1日があっという間に過ぎてしまったと感じました。皆様も同様に満足いただけたことを期待しています。

 舟津さん(BMC50期卒、日立グローバルライフソリューションズ(株)):半井大会長と長岡統括幹事より未来医学研究会の幹事手伝いを依頼され、不安も大きかったですが良い経験を得られるのではないかと思いから幹事を引き受け、最終的には人生初の座長まで経験することが出来ました。大会運営を通じて、他の学術集会にはない未来志向や大らかな雰囲気は、BMCの伝統や匂いをそのまま反映しており、大変懐かしく感じることが出来ました。また、卒業生や演者の先生方の発表はどれも面白素晴らしく、まさに大会テーマである既成概念を打ち破る内容だったと思います。本会の益々の発展を祈念するとともに、自分自身も本会で思い出した知的好奇心を探求していきたいと思います。貴重な機会をいただき誠にありがとうございました。

 次回第46回未来医学研究会大会についても、今回を更に上回る盛会になることを願い、かつ楽しみにしています。


 
半井 大(なからい だい)
第45回未来医学研究会大会 大会長 / ナカライテスク株式会社 代表取締役社長
略歴

1999年 京都大学法学部 卒業

同年 山形県にて学習塾経営

2011年 ナカライテスク株式会社

2013年 同社代表取締役社長

2016年 東京女子医科大学BMC 47期卒業