<最終号>Vol.48(2014年3月19日配信)

>>アーカイブ一覧へ

前号

 こんにちは、RegMed-now編集室です。街も徐々に色めいてきて春(と花粉)の気配を感じる季節となりました。さて、春といえば出会い別れの季節ですが、ついに本メールマガジンを運営する東京女子医科大学GCOEプロジェクトも今年度で5年間の活動の終了を迎え、本メールマガジンも、今回で最終回となりました。約3年半の短い期間ではございましたが、ここまでやってこられたのもご購読いただきました皆様のおかげでございます、誠にありがとうございました。メールマガジンは終了しますが、今後とも東京女子医科大学・先端生命医科学研究所をよろしくお願い申し上げます。

 今号では、梅津光生先生のインタビュー最終回をお送りします。本メールマガジンの締めにもふさわしく、全ての研究者に通ずる「若手へのアドバイス」をお送りします。最後までお楽しみください。


【目次】

1. インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第10弾 梅津光生
●最終回「若手へのアドバイス」

2. 再生医療トピックス
◇第35回日本炎症・再生医学会 演題募集のお知らせ(2014/3/20 締切)
◇第30回日本DDS学会学術集会 演題募集のお知らせ(2014/3/24 締切)

3. GCOEメールマガジン【RegMed-now】配信終了のお知らせ


1.インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第10弾
-早稲田大学 先進理工学研究科 生命理工学専攻 梅津光生

【プロフィール】
梅津 光生(うめづ・みつお)
1979年早稲田大学大学院博士課程単位取得後、国立循環器病センター、シドニー・セントビンセント病院客員工学部長を経て、1992年早稲田大学教授。2001年には早稲田大学大学院生命理工学専攻初代主任を務め、2008年より早稲田大学先端生命医科学センター(TWIns)センター長、2010年より東京女子医科大学-早稲田大学共同大学院共同先端生命医科学専攻長を務める。工学博士(早稲田大学)、医学博士(東京女子医科大学)。


☆シリーズ第10弾を読む > 第1回第2回最終回

●最終回「若手へのアドバイス」

◆「研究を世に出すための研究」の重要性

──今後、医療の研究を志す人に必要なことは何でしょうか?

梅津 日本というのは、基礎医学研究では『Nature』とか『Science』なんかのトップクラスのペーパーに載る数が、世界トップ3なんだよね。ところが臨床医学系の『Lancet』とか『The New England Journal of Medicine』だとトップ20以下なんだよ。なぜそこに差が出てしまうのかというと、結局良い研究をやっていても、それを患者に使うところにつなげる研究ができていないから。だから、そこを育てない限り、日本の医療行政も研究も進歩しないんですよ。

 だからそこをやるために作ったのが、共同大学院なんだ。そこは本当にもっともっと皆さんに興味を持って欲しい。研究を世に出すための研究をする。だから共同大学院は2つ目の博士号という人もいるんだ。それは素晴らしいことで、実験室にこもって研究だけをやって世に出さないというのは、そろそろやめていかないといけない。もちろん基礎研究そのものも大事なんだよ。大事なんだけれど、誰かがそういうことに対して声を上げないと。日本はこのままでは将来、韓国、中国、シンガポールに負ける世界を作っているんですよ。だから、僕とか岡野先生が一生懸命、声を大にして言っているのはそこなんです。

 まずは良い研究をやれと、それはもちろんそうだ。ただ、それを本当に患者に使える道筋をちゃんと作ろうよというのを僕らはやっているわけ。

──再生医療を進めていくためには、重要な分野なのですね。

 再生医療で認可をとるのは、医療機器よりもはるかに大変だよ。薬はTranslational Researchというのがしっかりできているけれど、それをつくるにはやっぱり10年、20年かかっているわけだよ。薬事法はあっても医療機器法はないだろう? そして、再生医療法もない。でも、今年の薬事法の改正でそれを章の中に入れることがおそらくできるようになる。そういうみんなのすごい努力の中で今変えようとしているところなんだ。僕は「あいつは一体何をやっているんだ」と言われて、ヘトヘトになりながらも共同大学院の運営を一生懸命やっているんだ。研究だけなら、こんなにヘトヘトにならないわけよ。違うことをやっているからヘトヘトになってしまう。そんな僕の姿を見て、メッセージが伝わると本当は嬉しいんだけどね。

──これから再生医療などの分野を研究する人にはレギュラトリーサイエンスの知識は欠かせなくなってくるでしょうか?

 医療分野の研究をしたいと思っている人には、やっぱりそういうことの大切さは見て欲しい。これからは修士から直接レギュラトリーサイエンスを学ぶ人も出られるように僕たちは考えようかなと思っているのです。例えば本筋の研究を10の力のうち10やるのではなくて、6で研究をやって、残りの4でレギュラトリーサイエンスを学ぶようなね。そういう人間は研究のプロフェッショナルにはならないかもしれないけれど、目利きにはなると思う。目利きになれば、いろいろな省庁で働くことだってできる。

 現に、医薬品医療機器総合機構(PMDA)という医薬品の審査をするところの審査官も今年は1人博士号を取った。その人はもともと、女子医大ご出身の循環器内科のお医者さんで、女子医大で医学博士を取っていて、早稲田では生命医科学という、これで2つ目の博士号を取得した。彼女は臨床の道を辞めて、薬なり機器なりを世の中に出したいという熱き志に燃えてPMDAへ行ったのだけれど、やっぱり半官僚みたいなことになってしまうわけだよね。自分の医学の知識を生かす以前に、他のことで時間を費やされてしまう。今はかわいそうだけれど、レギュラトリーサイエンスで博士号を取得したことをきっかけに彼女のような人にさらに頑張ってもらいたいね。

◆多様性を認め、哲学に沿って生きる

──若手へのアドバイスをお願いします。

梅津 結局は、自分の上の人をどうすれば抜けるかを考えることが重要だと思う。同じことをやっていたのでは、絶対に抜けないわけで、偉い先生とディスカッションしたんだったら、そいつをどうすれば負かせられるかをやっぱり考えるんだよ。絶対に考えなければだめだ。ディスカッションさせてもらえることを嬉しいと思う、というレベルでは不十分。時間を共有するのだったら、その時間の中で自分が最高に闘えることを用意してこなければいけない。だから、僕なんかはディスカッションしていて「ごめん」と謝ることがありますよ。例えば「この研究はこれをやって、こうやってこうやらないと意味がないだろう」と言ったときに「いや、こうやって、こうやって出たから、こっちのほうがいいんだ」と言ってきたやつがいた。「確かにそうだな。この間、言ったことは謝るわ」といって、謝るときはもちろん謝りますよ。人間なんてパーフェクトではないから、そういう事態も起こる。

 そういうわけで、僕のところで博士号を取る者はいっぱいいるけれど、みんな僕と同じ道ではなくて、違うことをやりなさいと言っている。

──学生にはどのように指導していますか?

 僕は、研究室であまり「一生懸命やれ」とは言わない。でも僕に何か言われたら、ちょっとやってみようかと何となく思うじゃない。そこが大事なんだよね。結局、こういう環境の中で、それぞれみんなサボろうと思えばいくらだってサボれる。でも、そんなことをやってもしようがないとまず思うような人たちがたぶん来るんだと思う。そうしたら自分にとって何かいいことをやろうとか、やってみようとか、工夫してみようとか、そう思ってやったことは、必ずや将来、何かの形で役に立つと思っている。人に言われたことを完璧にやっただけだったら何も残らないと思う。主語を「I」にして動くことが大事だと思う。

──先生の研究室は、女性がたくさん活躍していますよね

 僕の研究室にはたしかに結構女性が入ってきます。前に、研究室にきた子に「なぜうちに来たの。将来どうするの」と聞いたら「先生、笑いませんか、私、就職したくなくてお嫁さんになりたいんです」と言ったんだよね。えーっと思って「じゃあ、どうしてうちに?結構大変なの知っているだろう?」と言ったら「先生が優しそうに見えたから」と言われてさ、がくっときたね(笑)。僕は結婚だとか恋愛だとかの相談ってものすごく苦手なわけ。何て言うか、責任取れないじゃない。責任が取れるようなことだったら、いろいろとアドバイスをするけど、人間というのは多様性の生き物だから、その中で1つの事例がうまくいったから、おまえ、こうやったほうがいいよとはとても言えないんだよ。金融工学以上に難しい。だから、そういうことに対して応援はするけれど、こうやったほうがいいんじゃないか、とアドバイスなんか絶対できない。

 でも僕ね、途中からちゃんと応援していましたよ。彼女には、うちで技術や何かしらの哲学を学んでやっていけば、将来、何か役に立つことがきっとあるから、梅津研での研究を真剣にやったらいいと言った。そうしたら、いい卒論を書いて、会社に入ってバリバリ仕事をして、そのうち社内恋愛でいい人を見つけて結婚して、会社を辞めて専業主婦として子育てをやっているんだよね。だから結局夢を叶えているわけでさ。僕自身も哲学に沿って生きているから、夢は一つずつ叶ってゆくわけですよ。

◆「初志貫徹」よりフレキシビリティを大切に

──先生の哲学とは。

梅津 僕が伝えたいことは1人1人みんな違うから、共通の哲学を教えるから、みんな言うことを聞きなさい、とはいえないよ。だって、人によってみんな価値観が違うでしょ。だから、「私は良い研究をしたい」という子に対して、高学歴になるから、後で後悔する前に人生設計を何とかしておいたほうがいいと思えば、そういうアドバイスをする。でも、初めに言われたことがずっと続くわけではない。人間は生きているのだから。だから、変えていいんだし、初志貫徹なんかしなくていいと思う。

 この前、僕の弟子の坂口君が卒業式の日の謝恩会のときに良いことを言ったんだよ。それはね、「ダーウィンの進化論の話の中で、強い者が生き残るのではない。フレキシビリティのある者が生き残る」ということなんだ。彼は大企業を辞めて大学の研究の世界に戻ってきた。僕の知り合いでも、会社の中で生き延びるやつもいれば、会社を辞めて生き延びるやつも現にいるんだよね。そして、それぞれを僕は応援する。だってフレキシビリティをそこで駆使すれば、それぞれの人生があるわけだから。フレキシビリティのある人は、最終的にいろいろなことができるんだね。結論はそこですね。

──最後に先生のこれからの夢は何でしょうか。

梅津 夢はずっと持ち続けてはいるけれどね。僕の夢が他の人に負担になってはいけないと思うときがあるよ。例えばこのTWInsの後を頼むよとか。私も岡野さんもいずれはリタイアするのだけれど、その後、どうなるかというのは、僕としてはものすごく不安だよね。でも周りは僕よりもっと不安だということが分かった。みんなTWInsを何とかしたい、夢を持って何とかしたい。でもその夢は、本当に一番先に僕たちが思っていたイメージのまま動いているのだろうかということで、ちょっと違うなと思うこともときどきあるんだよね。TWInsを何とかしようとする機会を増やして、自由な意見交換と夢を語ることを続けるのが大事なのだと思う。将来は世界的な拠点となるTWInsサテライトなどができてくるかもしれない。

―了―

・・・・・・・・・

(インタビュアー:RegMed-now編集室/ 編集:RegMed-now編集室・MDS・シーニュ)

*本インタビューのご感想をぜひお寄せください。
regmed-infoabmes.twmu.ac.jp

▲ページトップへ


2. 再生医療トピックス

◇第35回 日本炎症・再生医学会 演題募集のお知らせ

会期:2014年7月1日~2014年7月4日
会場:万国津梁館(沖縄)
演題登録締切:2014年3月20日(木) 正午
URL:http://www2.convention.co.jp/jsir35/

- – - – -

◇第30回日本DDS学会学術集会 演題登録のお知らせ

『温故知新DDS ─30年の歴史と未来─』
会期:2014年7月30日~2014年7月31日
会場:慶應義塾大学 薬学部 芝共立キャンパス
演題登録締切:2014年3月24日(月) 正午
URL:http://www.procomu.jp/DDS2014/

▲ページトップへ


3. GCOEメールマガジン【RegMed-now】 配信終了のお知らせ

 GCOEメールマガジン【RegMed-now】は、本メールマガジンを運営する東京女子医科大学のGCOEプログラムの終了にともない、本号を持ちまして配信終了とさせていただきます。若手が主体となって運営してきたため至らないところも多々ございましたでしょうが、3年半、ここまで継続できたのもメールマガジンをご購読いただいてくださいました皆様の温かいご支援のおかげでございます、心より感謝申し上げます。今後とも、東京女子医科大学・先端生命医科学研究所をよろしくお願いいたします。

2014年3月19日 RegMed-now 編集室一同

*なお、こちらにご登録いただきましたメールアドレスは利用規約に従い、メーリングリストから解除させていただきます。ご理解の程よろしくお願い致します。

*「未来医療への挑戦者たち」は、引き続きPDF版を配布いたします。ぜひお知り合いにも広めて頂けましたら幸いでございます。





>>アーカイブ一覧へ

前号