Vol.37(2013年4月17日配信)

>>アーカイブ一覧へ

前号 | 次号

 こんにちは、RegMed-now編集室です。新年度がスタートしましたが、新しく環境を変えた人も、そうでない人もフレッシュな気分で今年も頑張りましょう!ところで、本メールマガジンを運営するG-COEプロジェクトですが、歳月が過ぎるのも早いもので、ついに最終年度を迎えました。残り1年、皆様によりよい情報をお届けできるようメンバー一同、努めますのでこれからも引き続き、よろしくお願い致します。
 さて、今号で熊本大学 太田訓正先生のインタビューも最終回となりました。今回は、先生の研究の哲学の核心に迫り、そして、若手研究者にむけたメッセージを頂きました。


【目次】

1. インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第7弾 太田訓正
●最終回「研究の楽しみ」

2. 再生医療トピックス
◇TWIns5周年シンポジウムのお知らせ(2013/4/20)
◇安倍晋三内閣総理大臣がTWInsを視察されました

3. ABMESダイジェスト
◇細胞シートに血管網の形成(坂口勝久ら)


1.インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第7弾
-熊本大学大学院 生命化学研究部神経分化学分野 太田訓正

【プロフィール】
太田 訓正(おおた・くにまさ)
1987年九州大学理学部生物学科卒業、1992 年九州大学大学院医学系研究科単位取得退学。理学博士。同年日本学術振興会特別研究員、同年熊本大学大学院医学研究科助手、その後ケンブリッジ大学研究員、さきがけ研究21「認識と形成」領域研究員(兼任)、熊本大学大学院医学研究科助教授、同大学院医学薬学研究部神経分化学分野准教授を経て現職。2012年には米科学誌プロスワン電子版に乳酸菌を使用したガン化しない多能性幹細胞作製法に関する論文を発表し、世界から注目を集めている。専門は神経発生学。


☆シリーズ第7弾を読む > 第1回第2回第3回最終回

●最終回「研究の楽しみ」

――医学系研究科で研究を行うことを選択されたのは、どういったきっかけがあったのでしょうか。

太田 これは医学部も理学部も関係ないのです。自分の興味に合うかどうかだけです。現在所属する研究室では、ニワトリの脊髄の運動ニューロンが筋肉へ向かってどうやって伸びるかという研究をされていたので学会や軸索ガイダンスの研究会などでよく知っていて、ちょうど助手が1名空いていたのですね。理学部、医学部ではなくて面白いテーマをやっているところというので選んで研究を続けているのです。

──医学部で教官になることで、特別な苦労はありましたか。

太田 医学部だからって困ったことはあまりないかな。研究は普通にできるし、授業も学部1~2年生は教科書を読むぐらいじゃないですか、細胞とは、膜とはと。そういうのはどの学部でも一緒だし、不便はないです。授業などでもなるべく面白く、こういう不思議な発生現象があるんだよと基礎研究をアピールしていますが、最後に彼らには医師免許だけはちゃんと取得しなさいと言っています。

──太田先生の今後の夢はどういったことでしょうか

太田 前述した九州大学の学科長は「研究者でなくてもいいから、朝起きて、今日はこういうことをしようというワクワクするような生き方をしなさい」と僕たち学生に言われたことを覚えています。僕はもう基礎研究の世界に入っていますから、今日はこの実験をやろうとか、テクニシャンの人にはこれをしてもらおう、そういう朝を毎日迎えられれば幸せですね。

──では、プライベートで実現したい夢はありますか。

太田 何だろう。研究がプライベートみたいなものだから。定年後に、学会で訪れた国をもう一度ゆっくり訪問したいですね。多くは空港と学会会場の往復で終わってしまいますから…そのためには今のうちに海外の学会に参加しておかないといけませんね。

──悩みはありますか。

太田 悩みと言えば、どの職業でも同じかもしれませんが、将来が特に見えない仕事ですよね。とくに研究というのは誰もやっていないことを調べますから、当然、成功すると思って実験を進めますが、うまくいくかどうかも分からないまま月日は過ぎますし…大学時代は60人ぐらいのクラスでしたが、当時の学科長の先生に「このうち研究者として残れるのは2~3人ですよ」とズバッと言われたことを今でも覚えています。駄目なものは駄目ということを覚えておくようにと。将来が見えない悩みはずっと持っています。

──スランプを脱出するために大事にしている言葉はありますか。

太田 結局、研究者の悩みというのは実験結果が出ないということに尽きますから、もうやるしかない。「失敗は逆に考えると、その方向はもうないよ、というのが分かったと思え」と先輩に言われたことがあります。実験して駄目だったと思ったら、もうこちらはないから次はこちらに逆方向とか方向転換する。そう思うと失敗してもちょっとは気が楽になったかな。失敗もその方向は駄目だというのを示していると思います。もう1つ素晴らしいお言葉で、僕の九州大学時代の恩師である森田弘道先生が、「小さく納まるより大きく砕けろ」という言葉を僕たち学生に紹介されました。砕けた後どうしてくれるんだと、心の中で突っ込みを入れましたが(笑)。小さく納まるということは簡単で、答えが予想できるような研究はするなということでしょうね。

──研究をしていて、一番楽しい瞬間というのは何ですか。

太田 前の日に培養を始めたシャーレを翌朝にのぞく瞬間は今でもドキドキします。軸索ガイダンスの研究を行っていた時は、神経をシャーレに接着させて培養したとき、神経突起がどれぐらい伸長するかとか、まっすぐ伸びるのか、枝分かれするのかなどと、顕微鏡をのぞく瞬間ですね。

──先生の研究していく上でのモットーは何ですか。

太田 やはり面白いことをサボらずにやるということです。今までずっと自分の興味に合う研究テーマをやってこれたのは幸せでした。共同実験は大事だし、自分たちの守備範囲外の実験はお願いして行ってもらうこともありますが、ポイントとなる実験は、自分たちで行うように心がけています。

──自分で実験したいという気持ちは、准教授になってからもずっとありますか。

太田 あります。学生のデータよりは、自分で手を動かしたデータを調べるほうが楽しいです。だからなるべく手を動かしていたいというのはあります。ケンブリッジ大学に留学していた時、2012 年ノーベル医学・生理学賞を受賞されたジョン・ガードン先生の研究室に行ったことがあります。ガードン先生はその当時で60代後半だったと思いますが、ご自分でカエル胚の入ったシャーレを持って歩いておられ、僕たちと研究室内ですれ違う時には、ずっと立ち止まって僕たちが行き過ぎるのを待っておられました。ああいう姿勢を目の当たりにするとすごいなと思います。現在でも、ご自分で実験をされているのではないでしょうか。

──研究室を大きくするよりも、自分が楽しい研究室を持ちたいということでしょうか。

太田 そうです。留学して思ったのは、欧米の研究室ではスタッフ1人につき、研究員、学生とテクニシャンといて、一番多いラボでも10人ぐらいでした。1人でラボ運営をコントロールできるというか、指示できるシステムはいいなと思いました。

 僕は今の研究室にいて最大の時で8人グループでした。そうなると、今日はこの学生にはこの実験をしてもらい、テクニシャンの人には何々をお願いしてと、毎朝、考えました。自分自身はこれをやると。あれはあれで大変だったけど、なかなか充実していました。こぢんまりとして全てを把握できていて、このぐらいがちょうどいい。自分も実験をし続けたいと思っています。1回手を動かすことを止めてしまうと、なかなか実験に戻れないというのがあるので。

──研究者を目指す若手へのメッセージをお願いします。

太田 僕が学生の頃はインターネットもなかったので、最新の論文を読む時は、図書館へ行ってコピーして読むというスタイルでした。今は情報がありすぎて、例えば、研究室を探す時にはホームページを見てよさそうなところに決めてしまうこともあるかもしれません。ありきたりですが、最後は、「自分が何に興味を持っているか?」という一点でしょう。

 僕は大学院に移った時も、熊本大に就職した時も、留学先を決めた時も、いつも自分の興味に合う研究室だけを選んできました。つらい思いをしたこともありましたが、損得を考えずに自分のやりたいことをやってきたので、失敗しても自己責任だと言い聞かせています。何事も自分で決めるというのが一番大事ですね。

 最近、幹細胞を研究している若い研究者と接する機会が増えました。日本には、幹細胞若手の会が存在していなかったので、ある有志5人がISSCR (International Society for Stem Cell Research) にちなんで、Tsukushi-SCRSという若手の会を設立しました(いわゆる勝手連)。毎年、会合なる呑み会を学会開催地で開いていますが、この会の参加者(ほとんどが30歳前後)はとても勢いがあり、皆さん活きが良いです。僕はオブザーバーというかたちでTsukushi-SCRSに参加させてもらっていますが、まだまだ彼・彼女らに負ける訳にはいかないという気持ちを新たにします。また、参加者には、この出会いを大事にして欲しいというメッセージを発しています。というのも僕自身、当時、熊本大学学長をされていた江口吾朗先生のさきがけ「認識と形成」領域に30代半ばで入れてもらったのですが、江口先生やその時のメンバーとの交流は、今でも「認識と形成」研究会という形で継続しているからです。

──こういう学生に研究室に来てほしい、というのはありますか。

太田 やはり自分自身で“これが面白い”というものを持っている人ですね。興味がないと来てもらっても、やりなさいという実験をやっているだけで、自分で考えないですから。こういう研究テーマで実験を進めようと相談し、そのプロジェクトを行いながら、時間が空いた時は、自分で独自の実験を試みる人がいいですね。自分のやりたいことは、土日や夜遅くとか関係なく。ツボにはまった時の若者のエネルギーにはすさまじいものがあり、僕の役目は、そのようなパワーをいかに学生諸君から引き出してあげるかだと肝に銘じています。

──ありがとうございました。


―了―

・・・・・・・・・

(インタビュアー:RegMed-now編集室/ 編集:RegMed-now編集室・シーニュ)

*本インタビューのご感想をぜひお寄せください。
regmed-infoabmes.twmu.ac.jp

▲ページトップへ


2. 再生医療トピックス

◇TWIns5周年記念 東京女子医科大学・早稲田大学ジョイントシンポジウム開催のお知らせ

東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設(TWIns)が設立5周年を迎えました。この記念シンポジウムを以下の日程で行いますので、ぜひご参加ください。
会期:2013年4月20日(土)10:00~17:10
会場:TWIns3階 早稲田大学セミナールーム
参加費:無料
URL:http://www.twmu.ac.jp/ABMES/ja/twins5thanniv


- – - – -

◇安倍晋三内閣総理大臣がTWInsを視察されました

3月27日(水)、安倍晋三内閣総理大臣は、先端生命医科学センターの視察と意見交換のために来学されました。その時の様子が政府インターネットテレビに掲載されております。
URL:http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg7740.html

▲ページトップへ


3. ABMESダイジェスト

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所(ABMES)の注目の研究成果をお届けします。

◇細胞シートに血管網の形成
  坂口勝久(Sakaguchi Katsuhisa)ら著

 我々は臓器の創製に向けて生体外で再生組織へ血管を付与するための技術開発を行ってきた。本論文では生体組織構造をまねたコラーゲンゲルの上で培養することで、血管網を持つ厚い細胞シートをつくる技術を開発し、再生組織の高機能化の可能性を示した。細胞シートとは細胞を増やして薄いシート状に加工する技術である。通常、心筋の細胞シートを厚くすると内部に酸素・栄養が行き届かず、死滅してしまう。生体外では0.03mm程度が限界で、より厚くするには内部に血管網を形成する必要がある。そこで、トンネル状にくりぬいたゲル材料に、血管内皮細胞を含有させた細胞シートを張り付けて培養を行うと、内部に血管網が形成されて培養液が流れ込み、厚さ0.1mmの組織になることを確認した。この成果により生体内に近い条件を試験管の中で作り出せるため、薬剤効果を検証する精度が高まると期待される。なお、本研究はJSTの最先端研究開発支援プロジェクト(FIRST)の一環として行われました。

Sakaguchi K., Shimizu T., Horaguchi S., Sekine H., Yamato M., Umezu M. & Okano T., "In Vitro Engineering of Vascularized Tissue Surrogates",
Scientific Reports 3,1316 (2013).





>>アーカイブ一覧へ

前号 | 次号