Vol.36(2013年3月19日配信)

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 こんにちは、RegMed-now編集室です。温かい日が増えてすっかり春めいてきましたね。そろそろお花見が楽しみな一方、花粉症の方にはつらい季節となりました・・・。細胞シートで花粉症は治らないものですかねぇ、ちょっと先生に聞いてみます。さて、今号で熊本大学 太田訓正先生のインタビューも第三回目となりました。今回は、先生が発見された生体情報シグナルの仲介因子“Tsukushi”の驚くべき能力から、先端医療研究全般の進歩にたいする先生のお考えまでをお伺いしました。
 iPS細胞に関する京都大学・山中先生のご研究のノーベル賞受賞から、登録数もさらに増えてきております。ありがとうございます。Regmed-nowでは記事のご感想やメールマガジンへのご意見、ご寄稿などをお待ちしております。
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【目次】

1. インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第7弾 太田訓正
●第3回「Tsukushiと幹細胞」

2. 再生医療トピックス
◇第12回再生医療学会 開催のお知らせ(2013/3/21-23)
◇第36回未来医学研究会大会 開催のお知らせ(2013/4/13)
◇【本日〆切】第42回医用高分子シンポジウム 演題登録受付中(2013/3/19)
◇バイオメディカル・カリキュラム(BMC)第45期 受付スタート!

3. ABMESダイジェスト
◇In vitroにおける血管網付与による機能的三次元組織の作製(関根秀一ら)


1.インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第7弾
-熊本大学大学院 生命化学研究部神経分化学分野 太田訓正

【プロフィール】
太田 訓正(おおた・くにまさ)
1987年九州大学理学部生物学科卒業、1992 年九州大学大学院医学系研究科単位取得退学。理学博士。同年日本学術振興会特別研究員、同年熊本大学大学院医学研究科助手、その後ケンブリッジ大学研究員、さきがけ研究21「認識と形成」領域研究員(兼任)、熊本大学大学院医学研究科助教授、同大学院医学薬学研究部神経分化学分野准教授を経て現職。2012年には米科学誌プロスワン電子版に乳酸菌を使用したガン化しない多能性幹細胞作製法に関する論文を発表し、世界から注目を集めている。専門は神経発生学。


☆シリーズ第7弾を読む > 第1回第2回第3回最終回

●第3回「Tsukushiと幹細胞」

――ニワトリの初期胚でのTsukushiの役割を報告されてから、網膜や神経などの幹細胞も含めて、広く体性幹細胞全般でのTsukushiの役割を明らかするような研究をされていますが、幹細胞に注目された理由は何でしょうか。

太田 Tsukushiが、幹細胞が在る場所に強く出ているからです。Tsukushiはきれいな発現パターンで、眼の幹細胞が局在していると言われている毛様体に発現しているし、脳でも神経幹細胞が局在する場所が2カ所――側脳室下帯と海馬の歯状回ですが、そこにもTsukushiは特異的に発現しているのです。学生の頃に学んだように、「面白い発現パターンをしている分子はやはり面白いことをしている」と考え、眼と脳で神経幹細胞の局在していることから幹細胞に興味を持ち、Tsukushiは分泌型分子として、幹細胞制御因子として機能するのではないかと考えました。

 現在、Tsukushiの毛に対する機能解析も行っています。Tsukushiは、毛のバルジ領域に発現しており、毛を剃ったり、皮膚に傷を付けたりするとTsukushi KOマウスでは野生型とは異なる挙動を示します。この解析も、Tsukushiが毛のバルジ領域に特異的に発現するという観察がきっかけで研究を進めました。

 よくよく考えてみると、Tsukushiは外胚葉由来の組織の幹細胞が局在するところに発現していることが明らかになってきました。今は、耳におけるTsukushiの機能解析も臨床系のグループと一緒に共同研究を行っていますが、発生時において、Tsukushiは耳の幹細胞が局在すると言われている領域に発現しています。今までに得られた結果をまとめて、今年はTsukushiのレビューを発生の教科書に載せていただく予定です。

――今後の研究の展望としては、今は現在クローニングされている3分子の体性幹細胞での役割を突き詰めていきたいなということですか。

太田 それもありますが、数年前から、遺伝子を一切使わない実験を行いたいと思うようになり、ちょっと逆方向というか手法を変えた実験も行っています。このインタビューが掲載されるころには、第1報が報告されていると思いますよ。この研究内容については、また別の機会に!

――世界の幹細胞の研究が今後どのような方向に進んでいくのか、どのような想像をされていますか。

太田 昨年、日本再生医療学会に参加した時と、今年のISSCRに参加して思ったことは、大きな2本の柱があって、1つは体性幹細胞のようにもともとあるものを使って治療をするのと、もう1つはiPSのように1個の細胞から何にでもなるような細胞からその組織特異的な細胞を作って、それらを用いて治療するという両方に進むのではないでしょうか。現時点では、体性幹細胞を用いた治療のほうが進んでいるような印象を受けました。岡野光夫先生の研究室が中心となってすすめられている、細胞シートを心臓や食道に移植するビデオは驚きです。あの方法で病気が治るというのを見せられると、すごいなと思います。これとは別に、全ての細胞に分化誘導させることができるiPS細胞由来の細胞バンクが設立されれば、組織特異的な細胞を治療などにいつでも使えるようになることが期待されますね。

――だんだんiPSに切り替わっていくのではないかという意見ですか。

太田 iPSはとても素晴らしい細胞だけど、多くの研究者が腫瘍化にはまだ不安を抱いているのではないでしょうか?iPS細胞は、作製されてまだ6~7年しか経っていないので、人間の体に移植したときに10年後、20年後に何も起こらないか?という検証は必要だと思いますが、世界中でこれだけ多くの研究者が時間とお金をかけて研究に励んでいますから、この問題もいずれクリアーされることと思います。それにしても、素晴らしい細胞ですよね。

――幹細胞を研究している研究者として、細胞工学やバイオマテリアルの研究者にリクエストはありますか。例えばこんな素材や組織モデルが欲しいなどですが。

太田 実際に僕たちはこういうのは使いませんが、シートにして移植するというのはすごくいい考えですね。細胞を直接移植すると細胞が薄まってしまって、移植部位に生着しないということでしょう。細胞をシート状にしても良いし、細胞をゼリー状の塊などにして、それをポンと移植場所に埋め込んでやるとか。そうするとそこから細胞がジワーッと四方八方へ移動して生着する、そういう方法も開発できれば面白いですね。ゼリー状だから、そこへ血管などが入っていって組織として振る舞うとか。

――今後の先端医療全般はどのようになっていくと感じていますか。

太田 再生医療がメインになり、皆さん長く生きたいと思うのでしょうね。1つ心配なのは、先端医療となると治療費も高くなりますから、お金持ちだけが治療を受けられるというのは良くありません。また、東京大学の中内先生のグループは、ブタで人間の臓器を造らせ、その臓器を患者の臓器と取り替えることを計画されていますが、夢としか思われなかったことが実現できるようになるかもしれません。でも、皆が長生きしてもねえ…個人個人が満足して死を迎えられることも大事だとは思います。その線引きがまた難しくなってくるでしょうね。

・・・・・・・・・

<最終回 「研究の楽しみ」に続く>

(インタビュアー:RegMed-now編集室/ 編集:RegMed-now編集室・シーニュ)

*本インタビューのご感想をぜひお寄せください。
regmed-infoabmes.twmu.ac.jp

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2. 再生医療トピックス

◇第12回日本再生医療学会 開催のお知らせ

テーマ:「10年後を担う再生医療を目指して」
会期:2013年3月21日(木)~23日(土)
会場:パシフィコ横浜
URL:http://www2.convention.co.jp/12jsrm/


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◇第36回未来医学研究会大会 開催のお知らせ

テーマ:「未来医学を明日の医学に-医療のMOON SHOTを目指して-」
会期:2013年4月13日(土)午前10時から
会場:東京女子医科大学 弥生記念講堂
参加費:会員5,000円 一般7,000円 (懇親会費込み)
URL:http://www.twmu.ac.jp/ABMES/SFM/ja/36th


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◇【本日3/19〆切】第42回医用高分子シンポジウム演題受付のお知らせ

会期:2013年7月29日(土)〜30日(火)
会場:産業技術総合研究所 臨海副都心センター 別館11階会議室
URL:http://www.spsj.or.jp/entry/annaidetail.asp?kaisaino=830


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◇バイオメディカル・カリキュラム(BMC)第45期の受講申込み受付スタート!

 東京女子医科大学では、医療産業に携わる社会人の方々が一年間で医学の基礎から臨床までの知識を系統的に学習することができる場として、バイオメディカル・カリキュラム(BMC)という講座を40年以上にわたり開講しています。
 座学のみならず、実習やワークショップなどのプログラムもあり、大変充実した内容です。4月には第45期受講生の応募申込みを開始しますので、ご興味のある方はHPをご覧ください。みなさまのご応募をお待ちしております。
開講期間:2013年10月~2014年9月
申込み受付:2013年4月1日~7月末日
URL:http://www.twmu.ac.jp/ABMES/BMC

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3. ABMESダイジェスト

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所(ABMES)の注目の研究成果をお届けします。

◇In vitroにおける血管網付与による機能的三次元組織の作製
  関根秀一(Sekine Hidekazu)ら著

 我々は再生臓器の創製に向けて生体外で再生組織へ血管を付与するための技術開発を行ってきた。本論文では積層化した心筋細胞シートへの血管網導入法を開発し、評価を行うとともに厚みの増大による再生組織の高機能化技術としての有効性を示した。具体的には内皮-心筋共培養細胞シートを血管床上へ積層化し、バイオリアクターを用いて組織灌流培養を行うことで3日後には心筋組織内で構築された血管と血管床との間に血管を介した繋がりができることが確認された。また血管が導入された後に細胞シートの段階的積層を行うことでより厚みのある心筋組織を再生させることが可能であった。さらに細胞シートの段階的積層化法により作製した血管付き心筋組織を生体の動静脈へ吻合移植を行ったところ、移植された組織は移植2週間後においても組織としての機能を保ったまま生着していることが確認できた。
 本研究は生体外で再生組織内へ機能的な毛細血管を付与し厚みのある心筋組織の再生を世界で初めて実現したものであり、今後の再生医療研究の基盤技術となるのみならず臓器モデルとして創薬研究にも大きく貢献し得ると考える。

Sekine H, Shimizu T, Sakaguchi K, Dobashi I, Wada M, Yamato M, Kobayashi E, Umezu M, Okano T.,"In vitro fabrication of functional three-dimensional tissues with perfusable blood vessels"
Nature Communications. 2013 Jan 29;4:1399.





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