Vol.35(2013年2月20日配信)

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 こんにちは、RegMed-now編集室です。厳しい寒さが続きますが、春を感じられるような暖かい日もみられるようになりましたね。ますます内容の充実に努めてまいりますので、これからもご購読いただけますと幸いです。さて、今号は引き続き熊本大学 太田訓正先生のインタビューをお送りいたします。先生が新規遺伝子の発見に至った経緯と、その熱い思いについて伺いました。どうぞお楽しみに。


【目次】

1. インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第7弾 太田訓正
●第2回「生体内情報伝達経路の仲介因子としてのTsukushi」

2. 再生医療トピックス
◇第12回再生医療学会 開催のお知らせ(2013/3/21-23)
◇第4回スーパー特区シンポジウム 開催のお知らせ(2013/2/21)
◇第29回日本DDS学会 演題募集のお知らせ(2013/1/9-3/26)

3. ABMESダイジェスト
◇当研究所所長・岡野光夫教授の記事が『METI Journal 経済産業ジャーナル』に掲載
◇受賞のお知らせ


1.インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第7弾
-熊本大学大学院 生命化学研究部神経分化学分野 太田訓正

【プロフィール】
太田 訓正(おおた・くにまさ)
1987年九州大学理学部生物学科卒業、1992 年九州大学大学院医学系研究科単位取得退学。理学博士。同年日本学術振興会特別研究員、同年熊本大学大学院医学研究科助手、その後ケンブリッジ大学研究員、さきがけ研究21「認識と形成」領域研究員(兼任)、熊本大学大学院医学研究科助教授、同大学院医学薬学研究部神経分化学分野准教授を経て現職。2012年には米科学誌プロスワン電子版に乳酸菌を使用したガン化しない多能性幹細胞作製法に関する論文を発表し、世界から注目を集めている。専門は神経発生学。


☆シリーズ第7弾を読む > 第1回第2回第3回最終回

●第2回「生体内情報伝達経路の仲介因子としてのTsukushi」

──太田先生はTsukushiという分子を見出して、これについて精力的に研究をなさっていますが、この研究を開始したきっかけは何ですか。

太田 熊本大学で、助手を5年間した後も、ずっと軸索ガイダンスに興味がありました。英国ケンブリッジ大学に、「ケインズ経済論」のケインズ博士やダーウィンと同じ家系に属するロジャー・ケインズ先生が、軸索ガイダンスの第一人者としておられました。すごい家柄出身の先生なのですが、とても気さくな先生で、脊髄内における軸索ガイダンスの研究をされていて、ケンブリッジまでインタビューを受けに行き、採用していただきました。留学中に見出したのは、レンズが視神経線維に対して「こちらへ来るな」と反発分子を分泌していることです。すべての視神経線維は、網膜の中心部にある視乳頭と呼ばれる領域に集まった後、脳へと投射します。レンズの方向には決して伸びません。僕がその時に見つけた現象は、レンズがこちらへ来てはいけないというストップシグナルを視神経線維に対して出している。それで全てを説明できるわけではありませんが、視神経線維は視乳頭に向かって伸長し、視乳頭から脳へ向かって投射するというモデルを発表しました。

 熊本に帰ってきた後、このレンズ由来の反発分子を同定したいと思いました。大学院の時もプレキシンのクローニングを自分自身で行いましたので、やはりレンズ由来の反発分子も自分で明らかにしたいと。この反発活性は、レンズ上皮だけにあることも分かっていましたので、ニワトリ胚のレンズ上皮細胞だけを集めてcDNAライブラリーを作製し、その中から分子を見つけ出そうと試みました。今では人やマウスのゲノムは解読され、およそ3万弱の遺伝子が存在すると言われていますが、当時はまだ未知の遺伝子がたくさんあったのです。レンズ上皮に発現している未知分子の全長をクローニングし、Tsukushi、Akhirin、Equarinの3分子を命名しました。

 TsukushiとAkhirinは発現がまさにレンズ上皮で確認され、これでレンズ由来の反発分子を採れたと思いましたが、残念ながら軸索反発活性はありませんでした。せっかく自分たちでクローニングして命名した機能未知の分子であり、他の組織においても興味深い発現パターンを示すことから、これら分子の機能解析を継続しています。Tsukushiの解析は、現在もっとも進んでいますが、最近、EquarinがFGFシグナルに依存してレンズ細胞の分化や接着に関与していることを報告しました。また、Akhirinは脊髄の中心腔に特異的に発現しており、脊髄神経幹細胞制御への関与を研究しています。

――発現パターンが“Tsukushi”の命名にもなっているのですね。

太田 クローニングした時に何と名前を付けようか?というので、ニワトリの初期発生時において興味深い発現パターンを示したからです。Tsukushiはステージ1からケラーの鎌と呼ばれる領域に発現し、ステージ2になると原始線条がニョキニョキッと伸びだし、ステージ4で原腸陥入が終了するのですが、Tsukushiは土筆のような形をした初期胚に発現しています。今までの学会発表では、最初のスライドとしてステージ4の初期胚と土筆の写真を並べたものを使うようにしていました。その他の理由として、日本人がクローニングを行ったので、日本由来の名前を付けたいというのがありました。慶応大学の岡野栄之先生が名付けられた「Musashi」はおしゃれだなと思っていました。いろいろ考えた揚げ句「Tsukushi」と決め、共同研究者であるケンブリッジ大学の友人にどう思うか?と聞いてみたところ、「それは面白い」と即答してくれました。

 日本人の研究者に聞いてみると「なんだかダサイ」というコメントもありましたが、海外の人が面白いと言ってくれたからそのままでいこうと決めました。TsukushiとMusashi、少し似ていませんか?(笑)

――ご自分でクローニングから始めて機能を解析していく、最初から最後まで追っていくということに魅力を感じられているのですね。

太田 当時は、まだ未知の遺伝子がたくさん転がっている状況だったから、目的の遺伝子の配列を自分で決めて(決めただけでは名前は付けられない)、何か機能を示すというと、わが子みたいな感じで愛おしいのです。僕にとって、上記した3分子はとてもかわいい。Akhirinは、「Akhi」というのがバングラデシュの言葉で眼を意味します。眼に出ている分子なので、バングラデシュからの留学生が「Akhirin」と付けたいと言うので、いいねということで決めました。Equarinは、レンズの赤道上(英語でequator)に特異的に発現していることからEquarinと名付けました。

 新しい遺伝子をとるというのはもうできないでしょう。Tsukushi、Equarin、Akhirinと3つ取れて、あとプレキシンも含めて、3万弱あるといわれる遺伝子のうち4つの新規遺伝子にかかわることができたというのは正直うれしいです。こちらもまた宣伝になりますが、『実験医学』(2006年9月号)の「私の名付けた遺伝子」というコーナーに、「Tsukushi~生体情報シグナルの仲介因子~」を書かせていただいていますので、こちらも読んでみてください。


・・・・・・・・・

<第3回 「Tsukushiと幹細胞」に続く>

(インタビュアー:RegMed-now編集室/ 編集:RegMed-now編集室・シーニュ)

*本インタビューのご感想をぜひお寄せください。
regmed-infoabmes.twmu.ac.jp

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2. 再生医療トピックス

◇第12回日本再生医療学会 開催のお知らせ

『10年後を担う再生医療を目指して』

会期:2013年3月21日(木)~23日(土)
会場:パシフィコ横浜
URL:http://www2.convention.co.jp/12jsrm/


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◇第4回スーパー特区シンポジウム 開催のお知らせ

会期:2013年2月21日(木)
会場:東京女子医科大学 弥生記念講堂
URL:http://www.twmu.ac.jp/ABMES/ja/supertk4th


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◇第29回日本DDS学会 演題募集のお知らせ

募集期間:2013年1月9日(水)~3月26日(火)
会期:2013年7月4日(木)・5日(金)
会場:京都テルサ
URL:http://www.knt.co.jp/ec/2013/29dds/

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3. ABMESダイジェスト

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所(ABMES)の注目の研究成果をお届けします。

◇当研究所所長・岡野光夫教授の記事が『METI Journal 経済産業ジャーナル平成25年2・3月号』に掲載されました。

URL:http://www.meti.go.jp/publication/data/2013_02.html

◇受賞のお知らせ

 当研究所大学院生の村岡恵さんが「第22回インテリジェント材料/システムシンポジウム 奨励賞」を受賞しました。おめでとうございます!

学会名:第22回インテリジェント材料/システムシンポジウム(2013年1月8日)
受賞名:奨励賞
演題名:『細胞の配向を制御した三次元組織モデル内における血管内皮細胞の遊走挙動解析』
共著者名:村岡恵, 清水達也,糸賀和義, 高橋宏信,熊代善一,岡野光夫





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