Vol.33(2012年12月19日配信)

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 こんにちは、RegMed-now編集室です。あっというまに冬の寒さが訪れましたね。日本分子生物学会、アメリカ細胞生物学会、アメリカ血液学会等の大きな学会も終わり、大掃除、来年の準備をされる方も多いのではないでしょうか。2012年のラストスパートをかけて行きましょう!
 さて、連載中の慶応義塾大学・総合医科学研究センター特別研究准教授の松崎有未先生のインタビューは最終回です。 今回は松崎先生の夢・若手へのアドバイスを語って頂きました。


【目次】

1. インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第6弾 松崎有未
●最終回 「夢、若手へのアドバイス」

2. 再生医療トピックス
◇第11回国際幹細胞学会 ISSCR Annual Meeting(2013/6/12-15)演題募集のお知らせ
◇第22回インテリジェント材料/システムシンポジウム&第7回バイオ・ナノテクフォーラムシンポジウム 開催のお知らせ (2013/1/8)

3. ABMESダイジェスト
◇自家表皮細胞シートを用いた食道内視鏡切除(ER)後の食道再生治療(金井信雄ら)


1.インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第6弾
-慶応義塾大学 総合医科学研究センター 松崎有未

【プロフィール】
松崎 有未(まつざき・ゆみ)
筑波大学第一学群自然学類数学主専攻および医学専門学群を経て1997年博士課程修了。Children’s Hospital/Harvard Medical Schoolなどでのリサーチフェローを経験後、慶応義塾大学医学部生理学教室にて現職。


☆シリーズ第6弾を読む > 第1回第2回第3回最終回

●最終回 「夢、若手へのアドバイス」

─―松崎先生の今後の夢はどういうことでしょうか。

 松崎 とにかく、あまり先のことを考えないから大したことは言えないけれど、できれば、誰もが記憶に残るような論文を1つ出したい。「あの時の論文を出したのはあなたですか!」という感じの論文を、やはり一生に一度は出したいですね。研究者全員の夢ではないですか。たとえば一番よく覚えているのが、私がまだ学部の学生で理研にいた頃に抄読会で読んだ、天谷雅行先生(現慶應義塾大学教授)の『Cell』の論文。その後に天谷先生に初めて会って、「あの論文を書いたのはこの人か」という感慨がありましたね。

 山中伸弥先生のiPS細胞…に対抗するのは無理として、インパクトの強い論文をバシッとメジャーな雑誌に1発出したいですね。なにせインパクトファクターというのはけっして馬鹿にならないので、小粒でもピリリと辛い、というようなのを出しても、やはりメジャーな雑誌のほうが良く読まれるわけで、森川君の『Journal of Experimental Medicine』の論文がもしCell, Nature, Scienceに出ていたら、引用回数はおそらくもう300を超えていると思います。正直、それができたらもうやめてもいい、2発目はなくてもいいです (笑)。

 あなた達の年代、本当に今だけです、何をやってもおもしろいのは。何か一つ自分の基礎、自分はこういうことをやりたいという基礎ができるのは35歳くらいまでで、その後は一番情熱を持って、たくさんの興味を持って、自分のやりたいことに集中していくことができますが、やれることがだんだん狭まってくる。ある程度のポジションがつくと、人を育てないといけない、指導しないといけない、雑用は入ってくる、授業もある。時間は本当に少なくなっていって自分のできることって限られてくるから、やれることが限られて狭まるでしょう。そうすると、あとは深く、狭く行くしかない。その時に自分に一番向いていて何が一番やりたいかと、手広くやっていたうえで選べる状況にしておかないと、後が続かないです。先のことなんか全然見えないのだし、これで食べていくのはやはり大変ですよ。

 でも、35歳くらいまでにいろいろな人に会って話をして得てきたものというのは、すべてが糧になります。どんなつまらないことでも、何が役に立つかわからない。それだけはいえます。だいたい、私は周りの人に助けられてきたから。何となくそういう関係を作っておくというか、周りにそういう人がいるということが重要。1人でできることは限られています。

──再生医療や先端医療研究をこうしていきたいという夢はありますか?

 松崎 人には向き不向きがあって、そういうことはそういうことを考える人に任せる。私は職人でいい。FACS (Fluorescence-Activated Cell Sorter) 職人、幹細胞職人、MSC(間葉系幹細胞) 職人でも何でもいい。どちらかと言うとそちらが好きです。

──若手へのメッセージですが、学生時代にどんな視点を持って学んでいくべきだと思いますか。

 松崎 取捨選択する目を育てること。自分でやりたいことは何か、そのつど選び取っていくしかありません。それで、できればその時に間違わないように、判断力を育てておく。でも、間違っても別にかまわない。間違ったと思ったらすぐやめて「ああ、間違った」と次をやればいいし、へこたれない。間違って当たり前だと思えば気が楽です。要は、フレキシブルであれというところでしょうか。

 価値観は1個じゃないですから。みんなそれぞれに一番大切なことってあるだろうし。価値観の多様さを学ぶには、海外の生活をすることは有効だと思います。理解不能な宇宙人みたいな連中が山ほどいるから。だから、その点、頭は柔らかくなるというか、受け皿が広くなる。簡単に言ってしまえば、ちょっとやそっとでは驚かなくなります。若いうちに広くいろいろなところに行ったほうがいいですよね。できることなら私は宇宙にも行きたくて、宇宙飛行士もちょっと目指したりもしたのですよ、だめだったけれども。

──松崎先生の研究室の教育方針はどんなことでしょうか。

 松崎 「必ず質問しろ」とだけ言っています。黙って座っているな、わからなければわからないと言いなさい、知らないことは何の恥でもないのだから、と。「こんな質問をしたら格好悪い」と思ってしまうのは一番よくない。学生はどんどん馬鹿なことを聞けばいいのです。「なるほど、ここから引っかかるのか」というのが私たちにもわかってくる。「そのレベルで引っかかっているのか、では、もう少しレベルを落として話そう」とか、「もうちょっと丁寧に説明しよう」とか、それで学生もまたフィードバックが得られるのです。だから、わからないことはわからないままにしない、「それは何ですか」とその場で聞きなさい、とだけは言っています。あとは自分でどうにかしろ、と。

──女性研究者として、後輩へのアドバイスをお願いします。

 松崎 なにせ、あまり女っぽくないからね(笑)。まぁ昔ほど、女性だからといって、必ずしも不利ではなくなってきています。以前は男女2人いて実績が同じだったら間違いなく男性を採っていたけれども、今はそうでもないでしょう。女性のほうが元気だし、パワフルでエネルギッシュというのがだいぶ浸透してきていると思います。

 一番難しいのは、やはり結婚して子供を産んで育てることと両立するところだと思います。私は子供を産んで育てる余裕はなかったから、子供無しで来てしまったけれども、これから生み育てようと思う人たちは、やはりそこは頑張らなければいけないですね。環境づくりを声高に叫ぶことも重要です。

 しかし女性たちのパワーが集団として年々大きくなってきているでしょう。昔は各instituteに女性研究者なんて1人か2人しかいなかったから、そのためにわざわざ託児所を作ろうなんて動きも起きなかった。でも、数が増えてくれば当然その人たちが、しかも女性の方がよりパワフルに仕事ができたりするから、子育てで離れられてしまうといったら困る、という場合も増えてきている。そもそも人口の半分は女性なんですから、それを利用しないのは即、国力の低下につながるわけなので、国をあげて子育てしやすい環境を作ってしかるべきだし、国が頼りにならないなら各instituteがきちんとやるべきでしょう。同じ大学の医学部と附属病院なのに、看護師さんのための託児所はあっても女性研究者はそこは使えないとか、そういうことが結構あります。その辺をどうにかすれば、もっといいと思うけれども。私が言っても、「あなたは子供を産んで育てるわけではないでしょう」と、とりあってくれないから、女子学生や教員・職員たちの署名を集めたりして、私たちがこれから研究者になる、医師になるためにはこれではやっていられない!ということを、頑張ってアピールしていってほしい。次世代に遺伝子を残すのは大事なことです。

──ありがとうございました。


―了―

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(インタビュアー:RegMed-now編集室/ 編集:RegMed-now編集室・シーニュ)

*本インタビューのご感想をぜひお寄せください。
regmed-infoabmes.twmu.ac.jp

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2. 再生医療トピックス

◇第11回国際幹細胞学会 ISSCR Annual Meeting 演題募集のお知らせ

上記の学会において、2012年12月6日より、演題受付が開始しました。
会期:2013年6月12日(水)-15日(土)
会場:アメリカ・ボストン
URL:http://www.isscr.org/Annual_Meeting_Home.htm
演題締切:2013年2月7日


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◇第22回インテリジェント材料/システムシンポジウム & 第7回バイオ・ナノテクフォーラムシンポジウム 開催のお知らせ

主催:一般社団法人 未踏科学技術協会  インテリジェント材料・システム研究会
会期:2013年1月8日(火)10:00~17:30
会場:東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 TWIns 2階会議室
参加費:協会会員4000円、一般14000円、学生3000円
URL: http://www.sntt.or.jp/imsf/index03.php

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3. ABMESダイジェスト

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所(ABMES)の注目の研究成果をお届けします。

◇自家表皮細胞シートを用いた食道内視鏡切除(ER)後の食道再生治療
  金井信雄(Kanai Nobuo)ら著

  食道の広範囲に及ぶ内視鏡的粘膜切除術(ER)後の上皮細胞シートを用いた早期の上皮再生治療。大動物(ブタ)モデルにおいて、自家表皮から作製された表皮細胞シート1枚を潰瘍部分に自家移植することにより、早期の食道上皮再生・術後狭窄の改善が認められた。大動物で食道狭窄モデルを作製する方法を開発したことにより、食道再生治療の研究が加速していくことが期待される。

金井信雄、大和雅之、大木岳志、山本雅一、岡野光夫," Fabricated autologous epidermal cell sheets for the prevention of esophageal stricture after circumferential ESD in a porcine model "
Gastrointest Endosc,76,873-81(2012).





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