Vol.21(2011年12月15日配信)

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 こんにちは、RegMed-now編集室です。いよいよ2011年もあと2週間ほどを残すのみとなりました。忘年会シーズンですが、皆様胃腸の調子は万全ですか?一方でTERMIS 2012 Viennaの要旨提出も始まっております。過ぎ行く1年を振り返りつつ、2012年に向けての英気を養いましょう!
 さて、今回のインタビュー企画は、歯科医として歯周組織再生に取り組んでおられる石川烈先生のインタビュー最終回です。今回は先生の夢や、若手への研究者として持つべきメンタリティなどいついて先生のお考えを伺いました。海外経験が豊富な石川先生ならではの、ちょっと考え方を変えてみるコツをお届けします。


【目次】

1. インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第3弾 石川 烈
●最終回 「人生は自分の生き方を見つける旅」

2. 再生医療トピックス
◇第21回インテリジェント材料/システムシンポジウムおよび
 第6回バイオ/ナノテクゴーラムシンポジウム 開催のお知らせ(2012/1/10)
◇TERMIS 2012 Vienna 演題募集開始!

3. ABMESダイジェスト
◇温度応答型クロマトグラフィーによる生理活性分離技術の紹介(金澤秀子ら)
◇サーイ・イサラ2011/12月号 デジタル最前線突撃レポート
 「再生医療に革命を起こす!細胞シート」(清水達也)
◇受賞のお知らせ


1.インタビュー企画 『未来医療への挑戦者たち』 シリーズ第3弾
-東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 石川 烈

【プロフィール】
石川 烈(いしかわ・いさお)
1940年生まれ。歯学博士。 1965年東京医科歯科大学を卒業。 1968年からスイス ジュネーブ大学で助手を務め、1971年東京医科歯科大学大学院歯学研究科博士課程修了。その後、東京医科歯科大学で助手、講師、助教授を務め、 1984年より同大学教授、 2000年より同大学院教授となる。 2005年より同大名誉教授となり、この年より東京女子医科大学 先端生命医科学研究所の客員教授となる。現在は、同研究所の顧問として歯周病再生研究、後進の育成に力を注いでいる。


☆シリーズ第3弾を読む > 第1回第2回最終回

●最終回 「人生は自分の生き方を見つける旅」

◆もっと出会いを!貢献を!

――先生のこれからの夢を聞かせてくださいますか?

石川 ゴルフでバーディーラッシュを決めることでしょうか(笑)。ゴルフは面白いスポーツです。私は大学でテニスをやっていたのですが、テニスは対戦相手がいます。もちろんゴルフも一緒にラウンドする人がいますが、スタートしてからホールアウトするまで、要するに全部自分の責任なのです。それでいて、一緒に回っている人からものすごく影響を受ける。他の人がすごくうまいと「よし抜いてやろう」とか、すごく飛ばすと「こっちも飛ばしてやろう」とか思ってしまいますね。研究と同じです。研究も、いろいろあるけれど、最後は全部自分の責任じゃないですか。だから、きちっとした計画を立てて、どこへ飛ばして、どうやってカップに入れて……という自分自身の作戦を練らなければいけません。
 でも、思った通りには飛ばない。石川遼君でも池ポチャをやる。ゴルフはフラストレーションのゲームなのです。それをフラストレーションと考えたら駄目で、「おれはまだ実力が足りないんだ」「もっと自分の思ったところへきちっと持っていけるよう技術を高めないといけないんだ」と考えると、あまり腹も立たないものです(笑)。だから、ぜひ皆さんもゴルフを……。

――若い人の間でも、一部流行っていますね。

石川 チャンスがあればぜひ。私がゴルフを始めたのは35歳からですから。ゴルフはいろいろな人と楽しく回れるし、一緒に回るとその人の性格がみんな分かってしまう。そういう意味では面白いですよ。

――では、皆でゴルフを、ということで(笑)。

石川 それくらいのゆとりを持ってやったほうが、結果的には皆がいい研究をするのではないかと思います。仕事場を離れたところで人と交流することも絶対に大事です。そういう出会いがいっぱいできると、人間の幅を広げてくれるのですが、日本は一番出会いが少ない国ではないかという感じもします。

――先生のジュネーブ時代のように、パーティーを開いたりとか、ありませんね。

石川 ないでしょう。本当は、もっとそういうものがあっていいのではないかな。ちょっとおしゃれして皆で集まる機会というのも大事だし。もっと出会いを!――歳を取ると、余計にそれを感じます。

――人づき合いが苦手だからと、尻込みして出ていかない人もいると思いますが、苦手なりに出たほうがいい。

石川 中には本当に苦手な人もいるでしょうが、多くの場合、自分で自分を無理に縛っているだけではないかと思います。でも、人間は人の助けがなければ生きていけないわけで、だから自分も自分のできることをする。社会というのは、皆が取ることばかり考えたらうまくいかない。ちょっと気持ちの持ち方を変えて、自分にできることは何か、どう貢献できるかということを考えるのも大事ではないかなと思います。

――自分をちょっとかっこよく見せたいと構えたり、何か利益を求めて人と交わったりするのではいけないということですね。

石川 ヨーロッパに住んでいると、そういう精神を強く感じました。例えば、日本語で住所を書くときには国・県・市・町の順だけれど、向こうでは最初に○○町と書く。国は最後です。自分の最も身近な環境である町を最も大切にしていて、それに対して何ができるかを考えている。日本の場合は、何でもまずは国が決めてくれないと、国民はどう動いたらいいのか分からないという感じもあります。そういう発想をしているうちは、本当の意味で何かをよくすることはできないのではないか。だから今、どんどん若い人が災害ボランティアに行って働いているというのは、非常に頼もしく思っています。私だって、できたら行きたいと思う。やはり、一人ひとり、自分が積極的に何らかの貢献をするというのが、社会をよくしていくために一番大事ではないかと思っていますが、若い頃はつい、かっこよくしたがるからなあ。

――空気を読んで笑われないようにとか……。

石川 そう。そんなことは何もないのですが。でもまあ、周りを引っ張ってくれる熱心な人がいれば、それについていくのもパッシブな貢献だと思います。得意でない人は自分から名乗りを上げなくても、いい案だと思ったものに乗っかって一緒にやっていけば、世の中はもっとよくなるのではないでしょうか。

◆自分の生き方について自問自答しよう

――研究面でも若手へのメッセージをいただけますか?

石川 私がスイスで目を覚まされたように、独創的な研究をやっていこうということですね。日本では「お前は何々をやれ」と言われることが多くて、もちろん第一歩からオリジナリティーを追求するのは無理だけれども、大学院へ進んで「自分は研究者としてやっていく」と思い始めたら、他人が歩んでいない自分だけの道を進もうとする努力は絶対に必要だと思います。継続は力なり、ネバーギブアップ、自分を信じることです。

――研究の道を突き進むかどうか迷ってしまったら、どうしたらいいでしょうか?

 全員が全員、研究者にならなくてもいいのです。研究者というのは、他人が駄目だと言うことを「なぜ駄目なのだろう?」と考えて、その理由をひっくり返すような人だと思うのです。一方、優秀な臨床家というのは、優れた研究の成果を仕事に取り入れて、患者さんのために頑張る人でしょう。自分の生き方がどちらに向いているか、常に自分と対話しておくべきです。
 私がスイスで仕事をしていたとき、熱心に研究を手伝ってくれる女性がラボにいました。彼女はジュネーブ大学の理学部に入ったものの、試験に3回落ちてしまったため、除籍になってしまったのです。向こうはそういう制度ですから。それで「君ぐらいの能力があったら、文学部か経済学部に行って勉強を進めたらどうなの?」と言ったら、「いや、そういうことはありません。私は実力がなかったのだから、研究の手伝いをするので充分です」と返ってきた。日本の場合は、だいたい1つのパターンにおける競争で、がむしゃらにやってはいるけれども、「人生は自分の生き方を見つける旅」という意識はあまりないのではないかと感じています。

――「博士号を取った人の中で、これだけの数が研究者になるというのは日本だけ」と聞いたことがあります。

石川 自分に一番合った生き方をするのは、何も恥ずかしいことではありません。専門医としての確かな技術で病気を治すとか、地方でたくさんの患者さんを診るとか、いろいろな生き方のパターンが出てきて、昔に比べて一人ひとりの心が柔軟性を持ち始めているように感じます。一方で、研究室を見渡したとき、これだけたくさんの人が同じ仕事をしているということに何か奇妙な感じを受けることもあります。しかし、これこそが日本を発展させる原動力だと思うこともあります。

――どういう研究をするかということと同時に、どうポジションを確保するかという問題もあります。

石川 欧米の研究者は原則として契約期間が決まっていて、テニュア(終身在職権)を取らなければ、やがて職場から去らなくてはいけません。一方、以前の日本の研究機関では雇用が比較的安定していましたから、あまり研究しない人も出てきて、研究レベルが下がっても人を変えられなかった。 だからといって、日本も時限型にするとポジションの確保だけで燃え尽きてしまうかもしれませんね。どこも米国のように時限型というのであれば、容易に移れるのだけれども。日本は過渡期の状態だから、皆さんにとっては大変だなというのは感じます。

――それでも、私たちは好きにやっていかなければいけないのかなという気がします。私たちが思いつく限りのことをやって、後進に道を開いていくような……。

石川 そうですね。結果的には、私だって同じことをやってきました。先端生命研に来て、様々な専門分野の研究者と協働して、まだ新しい産業とまではいかないけれども、医療の裾野を広げていけば世界を変えていける。そういう実感を得ています。本物の技術であれば、世界中にすぐに広がると思います。そして、それを研究する日本人も世界に羽ばたくでしょう。歯根膜シートだって、それで治るとしたらものすごく需要があると思います。自分の研究を社会に役立つところまで高めていきたいというのが私の夢です。



-了-



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(インタビュアー:RegMed-now編集室/ 編集:RegMed-now編集室・シーニュ)

*本インタビューのご感想をぜひお寄せください。
regmed-infoabmes.twmu.ac.jp

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2. 再生医療トピックス

◇第21回インテリジェント材料/システムシンポジウムおよび
   第6回バイオ/ナノテクゴーラムシンポジウム 開催のお知らせ

 産官学の壁を越えて、多くの方のご参加をお待ちしております。参加ご希望の方は以下のURLより参加登録をお願い致します。
主催:(社)未踏科学技術協会 インテリジェント材料・システム研究会
日程:2012年1月10日(火) 9:40~17:00
会場:東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 TWIns 2階会議室
   (東京都新宿区河田町8-1 TEL: 03-5367-9945)
URL:http://www.sntt.or.jp/imsf/index03.php

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◇TERMIS 2012 Vienna 演題募集開始!

 組織工学および再生医学の主要な国際学会であるTissue Engineering and Regenerative Medicine(TERMIS)World Congress in Vienna(2012/9/5〜8)の演題募集が始まりました(2012/1/31まで)。
詳しくはURLをご覧下さい。URL:http://www.termis.org/wc2012

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3. ABMESダイジェスト

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所(ABMES)の注目の研究成果をわかりやすくお届けするコーナーです。
<最新論文紹介>

◇温度応答型クロマトグラフィーによる生理活性分離技術の紹介
  金澤秀子(Hideko Kanazawa)ら著

 従来のクロマトグラフィーは有機溶媒を利用するため、タンパクなどの生理活性物質の活性を維持した状 態で分離することは困難であった。しかし、当研究所で開発された温度応答型クロマトグラフィーシステムでは、有機溶媒を使用せず、水を用 いて温度変化のみで物質の分離を達成できる。これにより、生理活性物質の活性を失うことなく分離、精製できる。さらに、有機溶媒を用いな いことから、環境に対する負荷が低い、グリーンなクロマトグラフィーとしても脚光を浴びている。この総説では、温度応答性クロマトグラ フィーシステムによる医薬品や生理活性物質分離技術を最新の知見も併せて述べている。

Temperature-responsive chromatography for the separation of biomolecules
Journal of Chromatography A, 1218 (2011) 8738–8747

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<雑誌掲載情報>

◇サーイ・イサラ 2011/12月号 デジタル最前線突撃レポート
  「再生医療に革命を起こす!細胞シート」(清水達也)

 細胞シートを用いた研究がサーイ・イサラ2011/12月号で取り上げられました。マンガになった当研究所教授の清水が細胞シートの今とこれからについてわかりやすく解説しております。今回出版元のNECビッグローブ様のご厚意でメールマガジンアーカイブから、記事の全部をご覧頂けることとなりました。ご興味のある方は以下のURLをどうぞご覧下さい。
URL:http://twins.twmu.ac.jp/gcoe/rmnv21comic
出典:NECビッグローブ発行「サーイ・イサラ」2011年12月号
*サーイ・イサラ(http://isara.biglobe.ne.jp/)はBIGLOBEが編集する、インターネット&パソコン活用マガジンです。

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<受賞のお知らせ>

ABMES所属の先生方が学会賞を受賞されました、おめでとうございます!

◇第38回日本臓器保存生物医学会 会長賞(辰巳公平 助教)

演題名:慢性肝疾患治療を目指した間葉系幹細胞の肝臓への新たなデリバリー法の開発
共著者:○辰巳公平1、大橋一夫1、松原吉紀2、小堀綾子2、鵜頭理恵1、垣立浩2、堀井章弘2、岡野光夫1
1)東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 2)オリンパス株式会社 研究開発センター


◇第33回日本バイオマテリアル学会 ポスター発表若手研究者 大会長賞(坂口勝久 研究生・早稲田大学助手)

演題名:微小流路付きコラーゲンゲル培養における血管網導入三次元心筋組織の構築
共著者:○坂口勝久,田中裕也,洞口重人,清水達也,岩崎清隆,大和雅之,梅津光生




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