Vol.8(2010年12月22日配信)

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こんにちは、RegMed-now編集室です。
 このメールマガジンは再生医療に興味のある研究者・医師の皆様のために現場発、最新の再生医療研究に関する情報や知識を正確にかつわかりやすくお届けすることを目的としております。ご意見、ご感想、新規登録をお待ちしております。

 今年も残すところあと2週間となりました。9月より配信しております“RegMed-now”も今年の配信はこのメールが最後となります。素人同然の編集部で拙い部分もございましたが、皆様に「再生医療」への関心を高めて頂けるよう試行錯誤を繰り返しています。本メールマガジンがより良くなるよう、これからも努めますので、来年も“RegMed-now”をどうぞよろしくお願いします。

 今年最終号となる今回は、前回に引き続き「スーパー特区と未来医療」(未来医学、清水達也先生著)をご紹介いたします。


【目次】

1. スーパー特区と未来医療 <後編>
―清水達也(未来医学 2009年 No.24より)

2. 再生医療トピックス
 ◆FIRST国際シンポジウム「21世紀の医療イノベーション~ナノバイオテクノロジーが切り拓く最先端医療への挑戦~」(2011/1/17・18)のお知らせ
 ◆大和先生テレビ出演情報!(2010/12/26)
 ◆岡野先生テレビ出演情報!(2011/1/10)


1. スーパー特区と未来医療 <後編>

―清水達也(未来医学 2009年 No.24より)

iii. 再生医療における課題とスーパー特区への期待

 細胞シート移植のみならず、日本での再生医療の普及にはいくつかの大きな課題がある。現在、企業や医師が再生医療製品を治験として臨床応用行う場合は薬事法の下、「1314号通知」にある基本的な考え方と指針に従い治験前に確認申請を行う必要がある。また「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(ヒト幹細指針)」が通知されて以降は、各研究機関・病院において医師が細胞を用いた臨床研究を行う場合も、「1314 号通知」に示されている企業治験に求められるのと同様の品質および安全性を確保したうえで厚生労働大臣の許可を得ることが必須となっている。これらの規則により再生医療が一定の科学水準での安全性・有効性を担保した形で行われることは好ましいことであるが、一方で、承認を得るまでの時間・労力・費用は莫大なものであり、国内で再生医療が普及しない大きな要因ともなっている。

 そもそも生きた細胞は種類の異なるたくさんの分子から構成されており、しかもそれらが量的・時間的に常に変動している。さらに組織となると細胞の空間的位置も常に移動しているものと推察される。細胞生物学や分子生物学が発展した現在においても、これらをすべて解き明かすのは困難と考えられる。こういった細胞や組織を用いる再生医療において、元来薬という本質的に分子を対象とする薬事法に沿った形でその使用の可否を評価・判断することがもともと合理的ではないと考えられる。このことは産官学の再生医療に携わる多くの人々が気づいていることであろうが、まだ抜本的な改革は行われておらず、あくまで既存の薬事法に基づいた指針やその見直しといった形で少しずつ良い方向に向けていこうというのが現状である。

 一方、今回のスーパー特区においては研究者サイドからの要望を規制当局が柔軟に受け入れるとともに、開発段階からの並行協議が盛り込まれている。実際、今年に入り再生医療関係の薬事に関する説明会や意見交換会が行われており、産官学が再生医療に関し共通認識を持つことは極めて価値のあることと考えられる。このように日頃からコミュニケーションをとっていることで審査の加速は充分期待できる。また、協議の中で何が課題かを明確にし、協調的に解決していくことが必要であろう。行政サイドは特区内において規制の緩和や見直しを試行的に行うことが期待される。これに対し研究者サイドが安全性・有効性に関する科学的なデータを迅速に収集、行政サイドに報告し協議することを繰り返し行うことで、より再生医療に適した規制や明確な基準の策定につながるものと推察される。細胞シートによる再生医療実現プロジェクトにおいても規制当局との協議に積極的に参加するとともに、レギュラトリーサイエンスに関わる研究開発を推進することで、細胞シートのみならず再生医療に共通な評価法や基準を提案していきたいと考えている。

 第二の課題はコストの問題である。細胞の採取・培養・品質管理に加え、GMP準拠のため のセルプロセシングセンター(CPC)の設立や維持費に莫大な費用がかかる。
またそれに伴って臨床応用に際しての患者負担が大きなものとなってしまう。コストに対する方策として少なくとも各研究施設や病院が行う初期の臨床研究には公的な補助が必要であろう。そうでなければ、疾病に苦しむ患者を救済しうる革新的技術が埋もれてしまう可能性がある。さらに国内で再生医療を産業化・普及するためにはベンチャー企業の治験に対しても公的な資金援助が必要と考える。大手企業の参入を促す方策も有効であろう。一方、研究者サイドとしてコストダウンを図ることも重要である。

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細胞シートによる再生医療実現プロジェクトにおいては各施設でのCPC設置によるコスト増を避けるため、ある施設のCPCで作製した細胞シートを異なるいくつかの施設にも輸送し移植に用いることを計画している。他施設への委託の形になることから、実施に関しては規制当局と協議中である。また、これらの実現には安全かつ安価な輸送技術が必須であり、これまでの細胞シート輸送技術をプロジェクトにおいてさらに発展させる予定である。この特区内における試行的臨床研究の経済性・安全性が確認されれば特区外への臨床応用も可能であり、細胞シート移植医療の普及につながる。さらに本特区では横断的研究として細胞単離・培養・シート化・積層化・評価といった一連の製造工程を可能な限り自動化する技術開発を行うが、これらの機器開発により安全で安定した組織の作製が可能となる。将来的にCPCを要しない製造工程の確立を目指しており、実現すれば大きなコストダウンが期待できる。

 第三の課題は有害事象が生じたときの責任の所在ならびに補償制度である。将来的に有害事象が生じたときの責任追及を過度に恐れるため規制が厳しくなり(第一の課題)、そのため過度に安全な製造工程の確立と大量のデータ収集のために莫大なコストがかかっているとすると(第二の課題)、むしろこの課題を最優先に解決する必要があるかもしれない。審査・臨床応用の時点で予測しえなかった有害事象に関しては免責とすべきであろう。補償制度に関しては行政サイドで検討中とのことで明るい兆しであるが財源の問題などもあり、今後再生医療に携わる産官学が一体となって議論していく必要がある。

 最後にどの程度のリスクまでを受け入れるかは、期待されるベネフィットによっても患者によっても異なるであろう。薬とは違い細胞を用いた再生医療に関しては、そのベネフィットに関してもリスクに関しても未知の部分が多い。したがって、臨床応用の可否に関しては現段階の科学で予測しうるリスクとベネフィットを明確に患者に提示し、きっちりとしたインフォームドコンセントを得た場合にどの程度の患者がその再生医療を希望するかを考慮することが肝要であろう。そういった患者サイドの意見を取り入れていくことで、実用化の意義や産業化の可能性が明確になってくるものと推察される。スーパー特区においては産官学に加え、疾病に苦しむ患者ともコミュニケーションをとれるような提案を検討していきたい。

iv. 未来医療の礎としての スーパー特区

 スーパー特区は内閣府ならびに3省庁が連携して運営しているが、現状では各省庁既存の制度に対する特例措置をとれず、独自の予算がないのが現状で不安な面もあるが、今後行政サイドにはさらなる抜本的な構造改革を期待したいところである。一方、各省庁の担当官がわれわれ研究者と目線を合わせた形での協議を積極的に開始しており、これまでにない産官学連携体制をつくる契機となっていることは間違いなく、今後複数のスーパー特区間でも相互に課題を共有し解決することで今後の再生医療の実用化の加速につながるものと信じる。スーパー特区が未来医療の礎となり、2、30年後には再生医療が日常診療における常識になっていることを期待したい。


◇清水 達也 (シミズ タツヤ)
東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 准教授
医学博士 専門:循環器内科、再生医学、組織工学

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2. 再生医療トピックス

◆FIRST国際シンポジウム「21世紀の医療イノベーション~ナノバイオテクノロジーが切り拓く最先端医療への挑戦~」のお知らせ

日時:2011年1月17日(月)14:30~18:25 / 2011年1月18日(火)10:00~17:40
場所:学術総合センタービル2F 一橋記念講堂
参加申込はホームページにて受付中(参加費不要)↓
FIRSTプロジェクトHP(PC版):http://twins.twmu.ac.jp/first/newsdetail.html#n004
シンポジウム専用HP(PC版):http://www.first-symposium.jp/


◆TBSテレビ「夢の扉 NEXT DOOR」出演のお知らせ

当研究所の大和雅之教授がTBSテレビ「夢の扉 NEXT DOOR」に出演します。
当研究所では「細胞シート」による再生医療実現のため、様々な大学、研究機関と共同研究を行っておりますが、その異分野融合の要となって精力的に働く大和教授に密着します。
お見逃しのないように、是非ご覧下さい。
*番組、映像に関するお問い合わせにはお答えしかねますので、ご了承下さい。

放送日時: 2010年12月26日(日) 18:30~
番組ホームページ: http://www.tbs.co.jp/yumetobi/


◆NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」出演のお知らせ

当研究所の岡野光夫教授がNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演します。
細胞シートというまったく新しい再生医療へのアプローチを確立し、夢の医療の実現に挑む岡野教授に密着します。
お見逃しのないように、是非ご覧下さい。
*番組、映像に関するお問い合わせにはお答えしかねますので、ご了承下さい。

放送日時: 2011年1月10日(月) 22:00~
番組ホームページ: http://www.nhk.or.jp/professional/index.html


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