<創刊号>Vol.1(2010年9月1日配信)

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おはようございます。RegMed-now編集室です。 
このたびグローバルCOE 「再生医療本格化のための集学的教育研究拠点」プロジェクトに基づき 
本日から、再生医療の「今」を伝えるメールマガジン【RegMed-now】を配信することとなりました。
このメールマガジンは再生医療に興味のある研究者・医師の皆様のために 
現場初、最新の再生医療研究に関する情報や知識を正確にかつわかりやすくお届けすることを目的としております。
第1 号は編集室のある東京女子医科大学先端生命医科学研究所所長の岡野光夫先生の提言を配信いたします。


目次
1. 東京女子医科大学先端生命医科学研究所所長 岡野光夫の提言
2. 再生医療トピックス


1. 東京女子医科大学先端生命医科学研究所所長 岡野光夫の提言

21世紀の先端生命医科学を牽引する医工連携ー岡野 光夫 
(生体医工学2008,46(3),333-334 解説特集:日本のME産業発展における真の問題点と解決策)

20世紀は、「人類が空間に挑戦する世紀」であった。
物理学を基盤とするテクノロジーが大きく発展し、大型のシステム、大量生産が次々に実現され、宇宙ロケット 、ジャンボジェット機、新幹線、高層ビルディングなど、我々の生活を大きく変えている。
一方、21世紀は「人類が時間に挑戦する世紀」とみて良いであろう。
限られた生命を最も価値ある時間として使うことの出来る社会の実現であり、生命科学を基盤と するバイオメディカルテクノロジーの確立が目標である。
世界の産業は効率化、省力化とともに、画一から多様へ、マクロからミクロ/ナノへ、構造から機能へと徐々にその対象を移行させてきている。医療においては、有機 合成化学により、同一構造物質を大量に生産するテクノロジーがほぼ完成され、さらに遺伝子工学や細胞工学によりタンパク質やペプチドが大量に合成可能となり、バ イオ医薬時代に突入してきている。
薬物治療は、対症療法から根本治療に向けて移行し、この時代的な流れの中で、今後の治療システムは、遺伝子治療、細胞治療、組織工学治療、再生治療など学際的な テクノロジーと医学の融合で実現される治療に向け、大きな飛躍を目指している。
また、生体画像、治療デバイス、人工臓器、ロボット手術などのテクノロジー革新が、医療を大きく変えてきている。神の手を持つ特別な外科医にしかできなかった手 術が、高度なテクノロジー支援によって多くの若い外科医でも手術可能になることが期待できる。 一人でも多くの患者に対し最善の手術をし、理想的な治療の実現に向けて、医学と工学が最高の融合を目指すことが強く望まれる。
20世紀はタテ型の学問領域、産業領域により、極めて効率的に学問や産業が発展し、人類に貢献した。医学においても高度な臨床が実現され、経験を持つ医師がほぼ 個人の限界までの努力によって高度な手術を可能にしてきた。
もし、効果的に高度なテクノロジーを医学に持ち込むことが出来れば医療の進歩は測り知れなく、人類は健康で安心して自分の寿命を最大限全うすることが出来よう。
このような意味で、医工連携は医学と工学の両方の知識と技術を共有する医師やエンジニアが主導すべき新しい連携を意味するものと考えるべきであろう。 医師がエンジニアに“あれを作って欲しい”、“これを作って欲しい”と頼むのではない。
医工連携は従来の治療をブレークスルーする方法を構想し、バイオロジーとテクノロジーを熟知し、それを基盤に新しい治療や診断を創出することを目指すものであろ う。
またエンジニアはただ単に医師にニーズを提示して貰い、それをテクノロジーで実現したり、あるいは既に欧米で提案されているものを改良していくというような初期 的な段階から脱却し、エンジニアが医療の中に入り込み、医学と工学の融合された技術と知識を基盤に従来の方法をブレークスルーする概念構築からスタートさせるこ とを目指すべきであろう。 当然なこととして医師との従来の枠組みを超えた連携により患者を治療するところまでやり抜く事こそが医工連携の本質であろう。 目の前の患者を治療する臨床は、医学の最も重要な役割である。
しかし、いま治すことのできない治療や手術、完全に正常な状態に戻すことの出来ない手術に対し、そ れを治すことのできる将来の新しい治療の具体的な目標設定、実現可能な計画を立てることができず、目の前の患者のケアーに忙殺されている医療の中で、世界をリー ドして行くことのできる未来の医療を作ることは出来ないであろう。 5年後、10年後に新しい治療、手術を考える戦略研究こそがきわめて重要であり、高度な工学的テクノロジーを医学と融合させて利用する新しい領域の創生こそが我 が国に課せられた緊急課題であろう。
アメリカでは1970年代より、バイオエンジニアリングあるいはバイオメディカルエンジニアリングという名の学部あるいは学科が50以上スタートし、現在は80 以上の大学で研究・教育活動が実施されている。 医学、生命化学と理工学の両方を教える仕組みは、遺伝子チップ、画像監視下手術、ロボット手術、埋め込み型治療デバイス、ステントグラフト、再生医療などを実現 し、ただ単に新概念の提案にとどまることなく、それを治療現場にまで持ち込まれるまでに体制整備が成熟されていることに注目すべきであろう。
論文を書くことが目的ではなく、それは今、治すことのできない患者を治療するためのプロセスであることを忘れてはならない。20世紀にある程度出来上がった医学 と工学の両サイドのシステムの融合と再構築による未来型の新領域の創生が極めて重要であろう。
東京女子医科大学は、桜井靖久先生(名誉教授)が医学部の中に工学部を作りたいとの夢を追い、約40年前に医学と工学の融合を目指したユニークな医用工学研究施 設を作りそれを育て上げた。
医学部卒以外の研究者、エンジニアに医学の系統的な教育を行う、バイオメディカルカリキュラム(旧医用工学カリキュラム)の1年のコースを40年前にスタートさ せている。 現在1,700名の卒業生を出しており、内視鏡を世界に向けて産業化させたり、CT、MRIなどの高度な診断装置、医療デバイス、医薬品の領域など第一線で活躍 する産業界のリーダー達を輩出している。 このカリキュラムに加えて、私は2001年より先端生命医科学専攻を大学院医学研究科の中に作り、ロボット手術、テーラーメイド医療、遺伝子治療、バイオマテリ アル、再生医療などの先導的な医学研究を進めている。
世界初の治療を目指して医師とエンジニアが一つの研究所の中で連携し、極めてユニークなさまざまのプロジェクト研究を展開している。 2008年4月より、早稲田大学と東京女子医科大学は融合大学院を作り、前途した理想的な医工連携研究、教育の本格化を目指した体制のスタートを決定した。 
現在7,100㎡の土地を購入し、医学と工学の間の壁は一切作らない融合のコンセプトの基で研究教育棟が建設中である。
世界でも注目されるこの新しい医工連携が新しい学問領域と新産業創出に貢献することを夢に、領域と世代を超えた医師とエンジニアが一体となった真の「時間への挑 戦」を目指す。


◇岡野 光夫(オカノ テルオ)
東京女子医科大学教授。Utah大学教授。工学博士。
昭和49年早稲田大学理工学部応用化学科卒業。 
東京女子医科大学助手、講師、Utah大学助教授、東京女子医科大学助教授を経て、平成6年より現職。 
平成11年より医用工学研究施設施設長、平成13年より先端生命医科学研究所所長となる。 
平成17年より日本学術会議会員。
専門は、バイオマテリアル、人工臓器、ドラックデリバリーシステム、再生医工学等。 
特に高分子の微細構造を制御することによってはじめて可能となる再生医学研究を追及している。 
細胞シート工学を提唱し、バイオ角膜上皮の臨床をスタートさせ、心筋、血管、肝臓、膀胱などの再生医療を目指している。
バイオマテリアル学会評議員、DDS学会、日本組織工学会、炎症再生医学会、日本再生医療学会などの理事を務めている。
昭和58年科学新聞賞。平成2年、平成7年および平成8年にOutstanding Paper賞をControlled 
Release Societyより受賞。平成4年、日本バイオマテリアル学会賞受賞。平成9年、Clemson Award for Basic 
ResearchをSociety for Biomaterialsより受賞。平成10年、高分子学会賞受賞。平成12年、Fellowを 
Biomaterials Science and Engineeringより受賞。おなじく平成12年Founders Awardを 
Controlled Release Societyより受賞。平成17年、江崎玲於奈賞受賞。平成18年、Nagai Innovation 
AwardをControlled Release Societyより受賞。
著書に「Biorelated Polymers and Gels」Academic Press、「Hydrogels in Medicine 
and Pharmacy」CRC、「Advances in Polymeric Systems for Drug Delivery」 
Gordon and Breach Sci. Pub.等。


2. 再生医療トピックス

第10回再生医療学会総会開催のおしらせ

来年度の再生医療学会総会は東京女子医科大学主催で行われます 
皆様の演題登録をお待ちしております。

会長:岡野 光夫(東京女子医科大学)
テーマ:21世紀にはばたく幹細胞工学・組織工学
会場:京王プラザホテル(東京都新宿区)
会期:2011年3月1日(火)~3月2日(水)
HP:http://www.aeplan.co.jp/jsrm2011/


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