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研究交流目的

 再生医療は今後の発展および産業化が期待されている先端医療分野のひとつであり、特に心臓、肝臓、軟骨等の再生を目的とした技術開発が各国の研究機関において精力的に進められている。さらに近年の幹細胞技術の躍進に伴い、細胞を用いた医療技術はその可能性を大きく広げている。一方、細胞を用いた再生治療の多くは、細胞懸濁液を患部に直接注入する方法をとっているが、移植細胞が患部に十分に生着しないこと、さらに血中に細胞を注入した場合、肺塞栓等のリスクが発生することが問題である。

 このような中、東京女子医科大学岡野・大和らが確立した細胞シート技術は、現在最も有望な細胞移植および再生治療技術として注目されている。温度応答性培養皿を用いて作製されるシート状の細胞組織(細胞シート)はこれまでの細胞治療とは異なり、生化学的物性を維持した状態の細胞を移植できるため、細胞移植効率およびその治療効果を飛躍的に向上させることができ、これまでに角膜、心筋、食道、歯根膜、軟骨の臨床応用に成功している。そこで本事業では、細胞シート再生治療技術をベースにして、丸ごとの心臓や肝臓、神経の再生など、現在の再生治療では完全に克服できていない難治性疾患を対象とした次世代型再生治療に取り組む。具体的には、細胞シート/生体材料/生理活性分子の最適な組み合わせにより、治療効果を最大限に発揮するシステムの構築を目指す。天津医科大学のYang教授は様々な生理活性分子のデリバリーシステムを構築しており、梨花女子大学校のLee教授らの作製するスキャフォールドを利用すれば、標的部位に効率よく作用するデリバリーシステムを構築できると期待される。各研究機関で培った技術はいずれも再生医療技術を向上させるために大きな役割を果たすと考えられることから、本事業を通じて3カ国の技術を結集させることができれば、世界の再生医療研究に新しい方法論を提案することも可能である。細胞シートとスキャフォールドを組み合わせた新しいタイプの細胞/高分子材料に対して緻密に制御されたドラッグデリバリーシステムを組み込み、これらの相乗効果によってのみ実現できる難治性疾患の治療技術確立を目指す。