株式会社 日立製作所

再生医療のインフラ構築を目指して

図1:カートリッジ方式培養容器
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図2:日立の自動培養装置
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 機能不全または欠損を起こした細胞・組織・臓器の根本的回復を実現する革新的な医療として、再生医療が注目されています。再生医療の産業化に向けて、均質な細胞・組織加工品の低コスト生産と安定的供給を可能とする自動生産システムの開発、ならびに、細胞処理施設や輸送システムなどのインフラ構築が急務となっています。日立グループは、これまで、各グループ企業の特長を活かし、幅広い領域に渡って、医療・バイオ関連の技術開発と事業を展開しています。再生医療分野においても、日立グループのこれまでの医療・バイオ分野での実績を結集・発展させることにより、社会基盤技術の構築を目指しています。再生医療の産業化を支援するためには、特に、細胞培養・組織製造の自動化が重要となり、自動培養技術の開発は再生医療実用化に向けた基盤技術です。

 CSTECにおいて日立は、東京女子医科大学、セルシード社との連携により、角膜上皮再生用の細胞シートの自動培養装置の開発に取り組んでいます。特に、自動培養装置用のカートリッジ方式培養容器(図1)に温度応答性高分子膜を実装し、細胞シートの完全閉鎖系自動培養技術の構築を目指しています。これにより、小型の装置内において外部環境からの汚染リスクを回避して細胞シートを自動培養することが可能になります。試作機(図2)により自動培養したウサギ角膜上皮シートは、手技による培養の細胞シートと同様に、細胞が重層化し、各種マーカー蛋白質が発現していることが、すでに確認されています。さらに、自動培養したウサギ角膜上皮シートの病態モデルウサギ眼への移植実験において、移植後の細胞シートが角膜実質層に生着しバリア機能を有することを実証しました※。今後は、適正製造基準(GMP)に対応した完全閉鎖系の試作機を用いて、ヒト細胞シートの自動培養を実証し、ヒト臨床に適用可能な安全性と再現性を保障する自動培養装置の完成を目指します。

※独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)基盤技術研究促進事業「組織再生移植に向けたナノバイオインターフェイス技術の開発」( 東京女子医科大学、セルシード社連携)、ならびに、大阪大学連携による成果。