ご挨拶


抗生物質をはじめとする薬物治療は正確に同一構造の化合物を大量合成できる有機合成化学を基礎に大きく発展してきた。1980年代後半より、細胞工学や遺伝子工学のバイオテクノロジーの急発展により、ペプチド、タンパク質のバイオ医薬時代に突入し、21世紀は更に対処療法から根本治療に向かうテクノロジーの開発研究が活性化し、その新しい挑戦のための集学的アプローチを可能にする体制整備が世界的な緊急課題である。

人工臓器治療や移植治療の限界を超えてより効果的な根本治療を実現する方法として、細胞、組織や臓器を利用して治療する再生医療が注目を集めている。ES細胞をはじめとした幹細胞の研究と同時に、あらゆる細胞を培養、増殖さえて細胞治療や細胞の三次元組織構造を実現する組織工学治療が益々重要となった。医工学の連携を基盤とするユニークな本再生医療拠点では、従来のタテ型の枠組みに捉われることなく、臨床的に根本治療を実現させる再生医療の創出と確立を目指す。

我々は、ナノ構造を制御する革新的な方法で、細胞を培養・増殖させた後に、細胞や細胞シートを37℃から20℃に温度変化させるだけで、酵素を利用することなく、又その構造や機能を損なうことなく培養表面から剥離・回収する技術を、世界に先駆けて達成した。我々はこうした細胞シートの積層化で組織や臓器を少量の細胞から造り、まったく新たな“細胞シート治療学”の確立とその医療テクノロジーの普遍化を達成することで再生医療の世界拠点の形成を目指す。