大日本印刷 株式会社

印刷技術が切り拓く医療の新しい世界

 DNPがどうして細胞を扱うような仕事をしているのか、という疑問を持つ方は多いと思います。DNPは1876 年の創業以来、印刷事業を拡大、発展させ、包装製品、住空間マテリアル、ディスプレイ製品(シャドーマスク、カラーフィルター)などの事業を展開してきました。我々は更に「印刷」の枠を広げようと日夜努力しており、細胞培養を含む先進ライフサイエンスの分野を、その重要なターゲットと位置づけています。

 DNPのライフサイエンス分野への取り組みの歴史は、1985年の尿検査紙にはじまります。ここで獲得した「酵素のインキ化、印刷」の技術は、その後涙や唾液の試験紙や妊娠検査キットにも展開され、更に、年々受容が高まっている血糖値センサーの開発にも応用されています。また、この他の取り組みでは、食品包装製品として開発・製品化に成功している高耐久性、高バリア性フィルムや無菌包装技術を、注射器やカテーテル、医薬品などの包装資材に展開し、製品化してきました。

 現在、DNPは、上述の事業を通じて獲得した技術、ノウハウに独自の微細加工技術と情報技術を融合させることで、創薬支援、更には再生医療分野における、ユニークな製品の開発を目指しています。

 その取組みの一環として、我々は東京女子医大CSTEC に参画し、温度応答性細胞培養基材の開発を進めています。温度応答性表面をフレキシブルなフィルム上に形成し、それを様々な培養容器に加工する、これが第一のチャレンジです。ここにはDNPのコーティング技術、EB技術、プラスチック成型技術などが使われます。第二のチャレンジは、培養基材表面の更なる機能化です。基材表面に微細かつ制御された凹凸を付与したり、細胞(非)接着性のマイクロパターンを形成したりすることで、これまでにない機能を発現させることを目指しています。ここでは、独自の微細加工技術を活用します。更に第三のチャレンジとして、情報技術との組合せを進めます。再生医療におけるトレーサビリティーや、画像解析を活用した細胞の品質管理、などがこれに当たります。

  再生医療は、現在までに様々なシーズが提案されていますが、実用化までには技術面、規制面、経済性について多くの課題が残されています。DNPはこの大きなチャレンジに対して、コアである印刷技術、情報技術を通じて積極的に関与し、再生医療の一日も早い実用化に貢献したいと考えております。